大久保洋師“ラグーンをダービーへ”定年前に残された大仕事

[ 2014年5月2日 05:30 ]

大久保洋師

 スタンドの調教師席で大久保洋師が坂路のモニター画面を食い入るように見つめている。「よし、万全だ。あとは抽選をクリアすればな」。視線の先には青葉賞の抽選を待つショウナンラグーン。自ら育てた名牝メジロドーベルの孫だ。「この牝系から重賞ホースはまだ出ていないからラグーンだけは何とかしたい。俺に残された数少ない仕事の一つだ」とつぶやいた。

 一級建築士の免許を持ちながら、父・末吉師の長男として競馬の門を叩いて44年目。来年2月には70歳定年を迎える。昭和の時代には“ステイヤー王国”を築いたメジロ牧場の主戦トレーナー。平成に入ってからは美浦の坂路調教のパイオニアとしてショウナンカンプ(02年高松宮記念)、ショウナンパントル(04年阪神JF)などのG1ホースを輩出した。「俺と同じことをしても俺は超えられない」。そう言い聞かせてきた土田、戸田、尾関、高橋文らの調教助手も後継調教師として独り立ちした。

 「残すところ10カ月か。ラグーンは祖母のカン性を受け継いでいる。何とかダービーに出したいんだ」。かつてドーベルが尻っぱねして天井に穴を開けた馬房にラグーンがたたずむ。自らの孫を見守るようなまなざしを向ける同師に青葉賞抽選突破の朗報が届いた。

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2014年5月2日のニュース