【有馬記念】池江郎師“劇的締め”2頭に託す

[ 2010年12月22日 06:00 ]

フォゲッタブル(右)とトゥザグローリーで“有終の美”を狙う池江郎師

 劇的なドラマが待っているかもしれない。あのディープインパクトなど数々の名馬を手掛け、来年2月末で引退となる池江泰郎師(69)が自身最後の有馬記念に2頭出しで臨む。百戦錬磨のトレーナーが「特別なレース」と意識する暮れの大一番。昨年4着のフォゲッタブルに、3歳馬トゥザグローリー。鍛え上げられた良血2頭で3度目のグランプリ制覇を狙っていく。

 トレーナーとして池江郎師に残された時間はあとわずか。中央競馬の世界では70歳を迎えると2月いっぱいで引退というのがルールだ。今年のG1戦線はいつもと雰囲気がちょっと違っていた。最後のダービー、最後の秋、そして最後の有馬記念。ラストイヤーとあって、事あるごとに“最後”の2文字が付いて回った。池江郎師も立場をはっきりと意識。その上で調教師生活を締めくくる、最後の一瞬まで情熱を燃やし続ける。
 「オレにはもう時間がない。だけど、やるべきことはまだたくさん残されているからね」
 実力馬がそろい、16頭しかゲートインできない暮れのグランプリ。池江郎師はメジロデュレン(87年)とディープインパクト(06年)で過去2勝している。さらに兄の池江敏郎元厩務員はかつてオグリキャップ(90年V)を担当、長男・泰寿師はドリームジャーニーで昨年のこのレースを制した。一族にとっても縁が深いこのG1に師は独特の重みを感じている。
 「その年に頑張った3歳馬と古馬が出てきて、総決算といえる一戦だからね。世間の盛り上がり方も違うし、やっぱり特別。兄と泰寿を合わせるとうちのファミリーで4つも勝たせてもらっているし、思い入れのあるレースだよ」
 今年の2頭はともに超一流の良血馬。母エアグルーヴのフォゲッタブルは昨年4着に続き、2年連続の参戦となる。前走・ステイヤーズSは道中、リズム良く運べず5着。敗因がはっきりしているからこそ、悲観することも一切なかった。
 「前走は自信を持って臨んだけど、チグハグな競馬になってしまった。悔しかったね。ただ、終わったことをくよくよ考えても仕方ない。レース後も馬は元気だよ」
 もう1頭、トゥザグローリーは自らが育てたトゥザヴィクトリー(01年エリザベス女王杯勝ち)の子。まだ発展途上の3歳馬ながら、その分、秘める可能性も大きい。中日新聞杯から中1週での参戦は予定通りだ。
 「血統の裏付けもあるし、持っているモノはかなり。ようやくそれを出せるようになってきた。最後の有馬記念に2頭も出させてもらえるんだから、いい結果を出せるように頑張るだけだよ」
 勝てば劇的すぎる2010年の幕切れ。数多くの名場面が生まれたグランプリにはそんなドラマがよく似合う。

 ▼87年VTR ゲートが開いた瞬間、ダービー馬メリーナイスが落馬。4コーナーでは皐月賞と菊花賞を制したサクラスターオーが競走中止。場内が騒然とする中、外からグイグイと脚を伸ばしたのがメジロデュレンだった。2着にユーワジェームスが入り、枠連(4)(4)は1万6300円。
 ▼06年VTR アドマイヤメインが飛ばして、よどみのない流れ。2周目の4コーナーで外からポジションを上げたディープインパクトが後続を突き放して圧勝。直線でスルスルと前に出たポップロックが3馬身差の2着を確保した。前めで踏ん張ったダイワメジャーが3着。

 ◆池江 泰郎(いけえ・やすお)1941年(昭16)3月1日、宮崎県生まれの69歳。59年に騎手としてデビューし、3275戦368勝。78年に調教師免許を取得、翌年に厩舎を開業。JRA通算836勝(うち重賞68勝)。86年菊花賞(メジロデュレン)でG1初制覇、05年ディープインパクトのクラシック3冠制覇など、G1を17勝している。

続きを表示

2010年12月22日のニュース