片岡愛之助語る「たくさん主演する姿を両親に見せたかった」紀香への感謝も 「国宝」には「共感」
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【インタビュー】歌舞伎俳優の片岡愛之助(53)は梨園の中でも希有(けう)な存在だ。血縁が重要視される世界で、歌舞伎とは関係のない一般の家庭に生まれながら今では上方歌舞伎を引っ張る主演級俳優に。「こんな未来はみじんも想像していなかった」という現在の地位を確立したその原動力は、実の両親、養父の故片岡秀太郎さん、妻の藤原紀香(54)との家族の絆だった。(吉澤 塁)
「まさしく運命の分かれ道でした」と述懐したのは幼少期のこと。秀太郎さんに「歌舞伎、好きか?」と声をかけられ「想像すらしていなかった」という未来が開けた。
堺市で船のスクリューを作る工場の長男に生まれた。大型車の往来が激しく外で遊べない環境で、習い事の一環で始めたのが松竹芸能の子役。テレビドラマ、現代劇、歌舞伎など子供ながらに芝居を楽しんだ。
「サッカー好きの少年が友達とサッカーをするのと同じ感覚。役者を仕事にするなんて全く考えていませんでした」。公演がかかると学校を休むことが続き、8歳ごろには両親が松竹と「もう辞めます」と話していた。そんな時、秀太郎さんから声をかけられ、名門・松嶋屋の部屋子となった。「あの言葉がなかったら辞めていました」と振り返る。
草履並べや黒子などの裏方、舞台裏で汗をかいた。「男の人が奇麗な女性になったり、大道具とか舞台装置も楽しくて。テーマパークに遊びに行くような感覚でしたね」。中学を卒業する頃には「この世界で生きていく」と自覚も芽生えた。
秀太郎さんや十三代目片岡仁左衛門さんの芸を学び役者としても実力を付け、2度目の転機が訪れたのは19歳の時。秀太郎さんからの養子の誘いだった。
今でこそ名門の養子となる俳優は珍しくないが、当時は坂東玉三郎(75)を除きほとんど前例がなかった。「養子という言葉の響きになじめず悩んだ」と言うが両親は即決。「父が祖父の工場を継ぎたくなかったから、僕には自由にさせたかったようです。快く重大な決断をしてくれた。感謝してもし切れません」
間もなく両親が相次いで他界。悲しみを乗り越え、芸を磨いた。任されるのは脇役ばかり。同世代の名門出身の役者が次々と主演を張っても「当たり前のことだと思っていたから、全く気にならなかった」。秀太郎さんの「どんなに小さな役でも手を抜くな」の言葉があったからだ。立役、女形を器用に演じ分け上方役者らしい繊細であでやかな表現を得意とする松嶋屋の看板俳優へと成長した。
歌舞伎を題材にした大ヒット映画「国宝」についても、愛之助と同じく梨園と違う世界から歌舞伎界に飛び込んだ主人公(吉沢亮)を「フィクションなので自分と重ね合わせているわけではないですが、主人公の葛藤など共感する部分は多くありました」と言うように、歌舞伎界を生き抜く過程で苦労もあったはずだ。だからこそ「独身を覚悟していた。特殊な世界で生きるために守るものがあってはいけない」。だが2016年に紀香との結婚を決断。「完全に勢いとタイミングですね」と笑う。結婚を機に「彼女のために一日でも長く生きたい」と思うようになった。
実の両親、養父を見送り、ますます妻の存在の大きさを感じている。「責任が重くなるかと思ったが、妻の支えがあるからこそ演じ続けられることが分かった。家族はもちろん上方歌舞伎のためにも少しでも自分にできることはないかと模索する日々です」。昨今は現代ドラマなどでの活躍もめざましいが、それも歌舞伎の裾野を広げるためだ。
終始笑顔を絶やさない中、ふと「今、こうしてたくさん主演する姿を両親に見てほしかったな」とぽつり。血縁が何よりも重い歌舞伎の世界。だからこそ、家族愛が愛之助をここまで支えてきたのだろう。
≪ルパン役「長く続けたい」≫愛之助は、新作歌舞伎「流白浪燦星 碧翠の麗城」(東京・新橋演舞場、5~27日)で主演を務める。人気漫画「ルパン三世」が原作で、主人公・流白浪(ルパン)と石川五ェ門の2役。「(原作の)モンキー・パンチさんの思いを胸に歌舞伎の面白さを融合した作品」と魅力を解説。23年に初演され、その後、何度も再演されている。「新作歌舞伎がここまでヒットするのも珍しい。これからも長く続けていきたい」と力を込めた。“リアル峰不二子”とも呼ばれる紀香も愛之助の出演を喜んでいるという。
◇片岡 愛之助(かたおか・あいのすけ)1972年(昭47)3月4日生まれ、大阪府出身の53歳。79年、NHK「欲しがりません勝つまでは」でドラマデビュー。81年に片岡千代丸として「勧進帳」で初舞台。92年に愛之助を襲名。94年に名題昇進。13年のTBS日曜劇場「半沢直樹」でエリート官僚黒崎駿一役が話題となった。16年にNHK「真田丸」で大河初出演。大の「ドラゴンクエスト」ファン。
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