【中村鶴松の鶴明times 9】新春浅草歌舞伎「傾城反魂香」 恋い焦がれた初役おとくへのこだわり

[ 2026年1月11日 09:00 ]

「傾城反魂香 土佐将監閑居の場」で念願の夫婦を演じる中村鶴松(左)と中村橋之助(C)松竹
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 【中村鶴松の鶴明times】歌舞伎の世界を描いて大ヒットした映画「国宝」(監督李相日)の主人公の喜久雄さながらに“部屋子”からスターダムに駆け上がろうとする俳優がいる。中村鶴松(30)だ。一般家庭で生まれ、十八代目中村勘三郎さんの元で修業する部屋子となり、歌舞伎俳優の人生を歩み始めた。今年2月からは、ついに初代中村舞鶴を襲名し、幹部に昇進する。第9回では現在出演中の「新春浅草歌舞伎」(26日まで)を取り上げる。

 「子供の頃から憧れていた演目を、小さい頃から夢を語り合ってきた仲間と一緒にできることをうれしく思います」。そう語る第2部の「傾城反魂香 土佐将監閑居の場」では、座頭中村橋之助との共演での初役という夢がかなった形だ。

 「傾城反魂香」は吃音(きつおん)の絵師又平と妻おとくの夫婦愛を描いた、近松門左衛門による古典の名作だ。橋之助と鶴松の2人は中学生だった2009年、名古屋の平成中村座で中村勘九郎(当時は勘太郎)らが演じる姿に触発され、長年この演目に憧れてきた。

 それから約17年。ついに浅草の地で、2人は念願の演目を任されることとなった。「若手で一番良い傾城反魂香は橋之助と鶴松だね、と言われるようにしたい」。強い思いが2人を舞台へ駆り立てる。

 今回の公演は鶴松にとっては、中村屋主体の公演以外では初の「書き出し」となる。書き出しとは主役級の役者を指す専門用語で、鶴松は昼夜公演ともに重要な役に抜てきされている。「松竹の本興行で幼い頃から語り合ってきた仲間といつかやろうね、と言っていた演目の上演がかなうのは今回が初めてです。松竹やお客さまが認めてくれて、浅草で1カ月やらせていただけるのは、また違ったうれしさがあります」。それだけに恐怖もある。「国ちゃん(橋之助)とは一緒にやれて、うれしいけれども、うまくいかないと一生やりたくない演目になるかもしれないという話はしている。トラウマだらけの役になる可能性もある」と全身全霊で芝居に打ち込んでいる。

 役は中村七之助から習った。「おとくはよくおしゃべりな役と言われます。でも元々おしゃべりなんじゃなくて、旦那さんの分も自分が代わりにやってきたから、そう見えるだけで、ただのおしゃべりではないんです。だから自分が先導する歌舞伎の中では、珍しい役かもしれません」。鶴松は自身の役柄をそう分析。だからこそ、おとくの出来には細心の注意を払っている。

 「又平はしゃべれない。おとくが良くなければ又平は絶対に良く見えないし、この芝居は倒れる。とある先輩からは“おとくは又平という人物を愛してはいるけれども、又平の絵を愛しているんだ。この人の絵は素晴らしいと思い続けて、信じないといけない”と言われました」

 舞台では、全力で橋之助を支えることに徹している。

 「あれだけの御曹司の中で、一部屋子の僕が書き出しの役をやるということは、なかなかないことだと思う。ありがたい半面、役割を全うしないといけない」。この約1カ月、鶴松はより強い覚悟を持って舞台に立っている。26日までの浅草興行の先に待つのは「猿若祭二月大歌舞伎」(2月1日初日、東京・歌舞伎座)だ。そこで鶴松は初代中村舞鶴を襲名し、幹部に昇進する。次回はそんな歌舞伎俳優としての大きな転機を迎える心境をひもとく。

 <猿若祭で襲名>ついに来月1日に初日が迫る猿若祭。昼の部では「弥栄芝居賑 猿若座芝居前」で、猿若座若太夫を勤める。夜の部では「雨乞狐」で襲名披露を行う。雨乞狐は昨年9年の自主公演「鶴明会」でも上演した演目。「名だたる先輩方の中で六役早替りの舞踊を一題任せていただけること、こんな光栄なことはございません。新たな名前の通り、歌舞伎座で舞い上がるような心震える舞踊をお見せできるように精いっぱい勤めさせていただきます」と意気込んでいる。 

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