【Kanzaki Sanga Sauna・トオルちゃん①】岐阜の奇才が描く「100年残る」令和の聖地

[ 2025年9月18日 12:30 ]

「Kanzaki Sanga Sauna」の主宰・林亨さん
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 【SAUNANCHU~ととのいの裏方たち~】岐阜県山県市の渓谷に、自然と調和する「Kanzaki Sanga Sauna(神崎サンガサウナ)」が誕生した。山と清流、鳥たちや鹿の声に包まれる環境。世界初とされる広葉樹ログサウナや“神崎ブルー”を目当てに、全国から訪れる人が後を絶たない。主宰は「大垣サウナ」元支配人、“トオルちゃん”こと林亨さん(65)。サウナ歴46年の集大成と語るこの場所に込めた想いと独自の哲学を、2回にわたって掘り下げる。前編は波乱万丈の人生と、新たな挑戦のきっかけに迫っていく。

 底抜けに明るい人柄と、あふれるサウナ愛。BS朝日の人気番組『サウナを愛でたい』など多数のメディア出演で知られる「大垣サウナ」元支配人の印象は、きっとこうだろう。だが実像は少し違う。緻密な計算と検証、飽くなき探究心で“隙のないサウナ”を作り上げる研究者だ。「サウナは人生そのもの。勉強でもあり、今でも追究したいもの」。還暦を超えてなお、65歳での新たな挑戦の幕が上がった。

 サウナ歴46年の原点は、18歳で岐阜から上京した俳優時代にある。「マーロン・ブランドのような役者になりたかった」。学校よりもテレビの現場や芝居の稽古に明け暮れた。事務所の先輩で、のちにドラマ「サ道」シリーズで“蒸しZ”を演じる俳優・宅麻伸に、近所の「田園調布サウナ」に連れていってもらったのが始まりだ。そこで身についた作法、とりわけ「どのタイミングで体を洗うか」といったルーティンは“宅麻流”。「相当影響を受けた」という昭和ストロングで、サウナ人生の第一歩を踏み出した。

 28歳で役者人生に区切りをつけ、紆余曲折を経て岐阜の「大垣サウナ」を手伝うことに。数年で支配人に就任し、タオルの畳み方から館内に埃一つ残さない清掃手順まで徹底した。「大垣サウナでの22年間は毎日が修行、必死だった」。やがて先代社長の逝去で施設は営業継続の岐路に立たされるが、ここで林さんは舵を切る。静岡の聖地「サウナしきじ」に足を運び、施設自ら“聖地”と掲げる覚悟に感銘。大垣へ戻ると「奇跡の水風呂」、「元祖・昭和ストロング」といった価値を言語化する打ち出しで、負のイメージを次々と上書きしていった。

 ほどなくBS朝日『サウナを愛でたい』から出演オファーが届く。ヒャダイン、濡れ頭巾ちゃんとの食堂トークをきっかけに“トオルちゃん”の愛称が生まれた。「これがドカンときた!キャラクターもあったのかもしれないが、すごく助かった」と振り返る。番組を契機に知名度は一気に広がり、サウナブームも追い風にメディア出演が相次いだ。客足も伸びて業績は上向きに。「狭い業界の中でもある程度は認知していただけた。いまも神崎サンガサウナに来た方が、大垣サウナにも立ち寄ってくれる。ありがたいですよね」。22年の歳月をそう語り、頬を緩ませた。

 2023年5月、自然と一体化する体験が転機をもたらす。知人の別荘がある山中湖でアウトドアサウナを楽しむうちに、不思議な感覚を味わった。「自分が自然?自然が自分?あれは自然と一体化したような感覚だった」。翌朝、それまで腑に落ちていなかった“ととのい”の答えがふっと降ってきたという。「あれは森林浴という“空気の力”(エアフォース)なんだ。作曲家が『譜面が空から降りてきた』と言うのと同じ。ドーンときた」。長年“昭和ストロング”で生きてきた林さんにとってそれは驚きの発見だった。その気づきを形にするべく、すぐに動き出した。

 岐阜に戻ると“エアフォース”を求めて県内を巡った。八百津町「ヤオツサウナ&スパイス」、多治見市「天光の湯」。良い感覚はあったが、より一層強い“それ”を探し求めた。23年7月、現在の施設地から約500メートル下流でテントサウナを実施。朝霧に浮かぶ鮮やかなブルーの川に手を入れた瞬間、これまでにない感覚が走った。「まろやかなのにキレがある。すごいぞ」。上流から下流まで肌感覚を確かめ、施設が建つ現在地で神崎川と隣を流れる沢の水質検査を実施。結果はまったく性質の異なる二種類の水が流れていることを示していた。「ここまで水質の違う“水風呂”を味わえる場所はそうそうない。ここに決めた」。サウナづくりへの決意が固まる。

 フィンランド在住のサウナ文化研究家・こばやしあやなさんとの出会いを機に、現地のサウナ観に魅了された。24年11月に大垣サウナを退職。翌年1月には“母国”で原点を確認すべく、10日間で22施設を巡った。「フィンランドの田舎と聞けば、多くの人が森と湖、煙を上げるサウナ小屋を思い浮かべる。それが正解。あの風景こそ、幸せを感じる国のあり方だ」とサウナの根幹を体感する。一方、日本では広大な森や大きな湖は身近とは言いがたい。しかし地図を開けば、川と山は無数にある。「同じような“森林浴の空気”が流れ、水が気持ちよければ本質は同じ。だからこの環境で、フィンランドの精神を宿すサウナをつくりたい」。林さん“最後の大勝負”が始まった。(後編に続く)

 ◇林 亨(はやし・とおる)1960年(昭35)8月23日生まれ、岐阜県山県市出身の65歳。俳優業、レストラン経営などを経て、岐阜の老舗「大垣サウナ」で長年支配人を務める。25年7月、地元山県市に「Kanzaki Sanga Sauna」をオープン。好きなサウナはフィンランド「Niemi kapee(ニエミカペー)」。

【Kanzaki Sanga Sauna】
 ・住所:岐阜県山県市片原字大フブセ611-1(岐阜バス停美舟養魚場前 橋向かい)

 ・営業時間 施設全体
 10:00~22:00(最終入場21:00)
 小屋サウナ(完全予約制)
 10:30~13:30
 14:00~17:0017:30~20:30

 ・公式HP:https://sangasauna.com

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