斎藤工主演テレ朝「誘拐の日」 評論家が語る“視聴者ドハマりのワケ” 魅力と今後のポイントとは

[ 2025年7月23日 11:00 ]

「誘拐の日」で斎藤工演じる誘拐犯と永尾柚乃演じる天才少女のバディが話題だ
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 俳優の斎藤工主演のテレビ朝日ドラマ「誘拐の日」(火曜後9・00)が話題だ。同名韓国ドラマが原作で、不器用な誘拐犯(斎藤)と永尾柚乃演じる天才少女の絆を描くミステリー。金銭目的で誘拐した少女が記憶喪失になり、さらに主人公は少女の両親殺害の濡れぎぬも着せられる。その中で、少女とバディとなって逃走劇と真犯人捜しを展開している。主人公のマヌケな部分を天才少女が補う凸凹感や、事件に潛む謎が視聴者を引きつけ、Tverでの第1話見逃し配信回数は200万回を突破している。今作の魅力やポイントをメディア文化評論家の碓井広義氏に聞いてみた。

 ――今作の最大の魅力、視聴者の心を捉えているポイントはどこにあると思うか?
 「タイトルに“誘拐”とあることから、被害者がいて、犯人がいて、それを追う刑事がいてという一般的な“クライム・サスペンス”を連想する人が多いかもしれません。しかし、本作は違います。事件自体も、登場人物たちも単純ではないからです。最大の注目点は、政宗(斎藤さん)と凛(永尾さん)の関係性でしょう。いわゆる犯罪者でも被害者でもありません。政宗は基本的に善人である“マヌケな誘拐犯”。凛は類を見ない“記憶喪失の天才少女”。そんな2人が力を合わせて苦境から脱しようとする。まさに前代未聞のバディドラマです。誘拐犯と誘拐された少女が、逃避行や真相究明に挑む相棒となる。時にいがみ合いながらも仲は深まり、やがて本物の父娘のように見えてくる。サスペンス、コメディー、ヒューマンが絶妙のバランスを保ちながらの展開は、ふと映画『レオン』を想起させます。政宗と凛の関係性の変化・深化が、軽妙なやりとりと相まって、このドラマ最大の見どころとなっているのです」

 ――韓国版との大きな違いは?
 「韓国版でユン・ゲサンが演じる主人公のキム・ミョンジュン。自分が誘拐した11歳の少女に顎で使われ、逃げた妻にも頭が上がらない情けない男です。ちょっとぼんやりな3枚目ですが、どこか憎めないキャラクターが魅力となっています。日本の俳優では、大泉洋さん、ムロツヨシさん、阿部サダヲさんといった名前が思い浮かぶかもしれません。ところが、そんな役柄を、あの斎藤工さんが演じている。それが韓国版との大きな違いでしょう。斎藤さんといえば、どこかミステリアスな役を演じることが多いイメージがありますよね。それが少女に振り回される、まぬけな誘拐犯で、挙句の果てには、おならまでする主人公。もう“新鮮”以外ありません。しかも、かなりハマっている(笑い)。イケメン俳優がこうした役を無理に演じる時の寒々しさも皆無です。思えば、斎藤さんは覆面芸人『人印(ピットイン)』として『R-1ぐらんぷり』に挑戦したり、東京NSCにも入学したキャリアを持っています。役に徹するためなら、かっこいい自分を捨てられるし、ピエロになることもできる人です。今回、そんな経験が存分に生かされていると思います。そして、もう一つ韓国版との大きな違いが、記憶喪失になる天才少女の年齢設定です。韓国版のユナが演じるロヒは、11歳という設定。日本版の永尾柚乃さん演じる七瀬凛は、8歳の設定。子供にとって3歳の年齢差は大きい。韓国版を見ていると、大人が圧倒される天才少女の発言は確かに11歳くらいでないとリアリティーがありません。これを8歳という設定でも納得させているのは永尾柚乃さんの存在感と演技力に尽きます。多分、柚乃さんでなければ、この役は成立しなかったでしょう。バラエティー番組で観る永尾柚乃さんは、たった8歳という年齢ながら、大人びた発言で大人たちを驚かす頭脳明晰(めいせき)な天才子役。まさに“人生何周目?”と言われるゆえんです。そんな彼女だからこそ、8歳の設定で大人顔負けのせりふを口にしても、そこには説得力があるのです」

 ――斎藤さんと永尾さん以外の配役についてはどうか?
 「私が注目しているのは、失踪した妻・汐里を演じる安達祐実さんですね。第3話で、実は自分がHIVに感染しているという衝撃の告白があり、“そんな事情があったんだ”と視聴者の涙を誘いました。しかし、よくよく考えると、第2話で政宗からの電話に出なかったり、芽生の世話をすると約束していながら病院に通っていなかったりと、一筋縄ではいかない怪しい人物なのかもしれません。第3話では、政宗を巡って凜と汐里がお互いの腹を探り合う、絶妙なやりとりが印象的でした。“どうしてうち(七瀬家)を狙ったの?”と切り込む凛。“私は殺してない!”と突っぱねる汐里。平成の天才子役・安達祐実と令和の天才子役・永尾柚乃の“新旧・天才子役対決”は実に見応えがありました。また、Snow Manの深澤辰哉さんが演じている山崎弁護士も注視しています。第3話では、江口洋介さん扮する須之内刑事に、山崎が過去に凛の家庭教師をしていた事実を話します。山崎は堰(せき)を切ったかのように凛の天才ぶりに関して雄弁に語りました。しかも須之内刑事たちが帰った後には、一人、窓の外をボーっと眺めている山崎が意味深に映し出されます。その表情が悪いことをたくらんでいるようにも見えるし、凛のことを思って物思いにふけっているようにも見える。果たして山崎は敵なのか、味方なのか?この先、キーパーソンの一人になってくる予感がします。なんと言っても大人気のSnow Manですから(笑い)」

 ――今後の考察ポイントは?
 「第1話の冒頭、1995年に先代の栄作院長と思われる人物が、刃物を持った男に病院内で襲われ、院長が子供たちに囲まれている肖像画に血が飛び散るシーンがありました。しかし、副理事長室の写真では、栄作元院長が凛を抱いていることから、比較的最近まで生きていたことになります。では、95年の事件の被害者は誰なのか、という謎が残っています。謎が二重三重に張り巡らされているミステリアスなストーリー。考察ファンにはたまらないドラマなのではないでしょうか。もちろん、“凛の両親を殺害したのは誰か?”という犯人捜しのミステリーも大いに気になるポイントです。医学博士の水原由紀子(内田有紀さん)や病院副理事長の七瀬富雄(長谷川初範さん)も含め、登場人物全員にどこか怪しい部分があり、1話ごとに謎が深まっていくのも面白いですね。WEB上にあった視聴者の感想の中に、“政宗や凛も、まだ容疑者リストから外すことはできない”という声があったのには、“たしかに、そういう見方もできるな”と膝を打ちました。また政宗は緊張すると頭痛がするらしく、ラムネをポリポリかじると、それが和らぐ。これなど韓国版にはなかった設定であり、何かの伏線になっているのではないかと思っています。他にも原作の韓国ドラマにはない日本版オリジナルの要素が随所に見られるので、もしかしたら、真犯人も韓国ドラマとは違ってくるかも知れませんよ(笑い)。ですから、韓国ドラマを最後まで見て結末を知っている人も楽しめるはずです。政宗と凛、2人の逃避行はどこに向かって、どんな結末にたどり着くのか?その時、2人の関係性はどうなっているのか?最終回まで目が離せません」

 ◇碓井 広義(うすい・ひろよし)メディア文化評論家。慶大法学部卒。博士(政策研究)。テレビマンユニオン・プロデューサー、上智大文学部新聞学科教授を経て現職。編著「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」ほか。

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