【サウナヘヴン草加・ちくわ店長】「サウナは大人の公園」 音楽とデスマッチ “熱”を愛する男の原点

[ 2025年6月9日 12:00 ]

サウナヘヴン草加のちくわ店長
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 【SAUNANCHU~ととのいの裏方たち~】「SAUNANCHU(サウナンチュ)」──それはサウナに生きる“人”の物語。“~んちゅ”とは、沖縄の言葉で「~の人」のこと。彼らの手で薪が割られ、温度が保たれ、静かにストーブが燃え続ける。そんな「ととのいの舞台裏」に立つ人々の仕事、哲学、人生に迫る。

 第1回の舞台は埼玉県草加市。せんべいが名物のこの地を「サウナの街に」と熱い思いで突き進む男がいる。サウナ好きなら思わず反応してしまう、特徴的な赤いネオンの看板。“サウナ大国”フィンランドの有名な公衆サウナを思わせるそのシンボルの先に、今日の主役が待っていた。“ちくわ店長”の通称で親しまれる岡見知彦さん(45)。白髪まじりの無精ひげをたくわえた口元でにっこりと笑うその表情は、どこか人を惹きつける人間味にあふれている。サウナヘヴン草加を支える彼の原点とは――。

 彼の温浴体験の原点は、音楽活動にあった。高校1年のとき、社会人バンドからの誘いを受けたのが始まりだ。ハードコア系パンクバンドでの担当はベース。「初心者中の初心者。最初は何もできなかった」と、10歳以上離れた大人たちに揉まれながら音楽を学んでいった。20代前半には、ジャズやブルースのルーツでもある“ジャグバンド”にのめり込み、年間200本近いライブをこなす日々。「ライブ終わりに風呂に寄って帰るのが楽しみだった」と、全国各地の温浴施設をメンバーと巡る時間が、癒しのひとときだった。

 東日本大震災の翌年。「音楽で生きていく」とプロを志し、上京を決意する。アコースティックギターを片手に“ちくわ朋彦”の名でソロ活動を開始。年間150~200本のライブをこなし、自主制作でアルバムも4枚。「日銭を稼いで、歌い続けた」と語るように、音楽一色の5年間を駆け抜けた。その後、結婚と第一子誕生を機に、ギターを置く決断を下す。

 転機は、思わぬ形でやってきた。離婚を経て、埼玉県草加市に移住。音楽好きのマスターがいる居酒屋「和伊話云(ワイワイ)」で運命の出会いがあった。「“うちの店にもサウナ好きが来るよ”と紹介されたのが、今のオーナーだったんです」。毎日のように足を運び、ジョッキ片手にサウナ談義を交わした。22年、店で飲んでいると「サウナ事業を手伝ってほしい」と打診を受けた。「正直、最初は迷いました。でも“好きなことを仕事にできる”チャンスって、そうそう巡ってこない」。熟考の末、当時勤めていた葬儀屋を辞め、サウナ業界へ飛び込んだ。

 「サウナって、天国だよね」。店名「サウナヘヴン草加」は即決だった。同年11月、二人はフィンランドを訪れる。「本場を知らずに施設をやるのはどうなんだろう」と葛藤を払拭するための、2泊5日の弾丸旅。草加での出展計画を見据え、首都ヘルシンキに点在する“都市型”公衆サウナを巡った。当初は「草加健康センター」など、日本の公衆サウナをモデルにする予定だったが、本場での体験は価値観を根底から覆した。「この体験を日本でやったら絶対楽しい。俺たちは“フィンランド式”のサウナをやろう」。その瞬間、施設の方向性が明確になった。

 最も心を打たれたのが、“セルフロウリュ文化”だ。「日本では“ロウリュしてもよろしいですか?”と、どこか申し訳なさそうな風潮がありますよね。でもフィンランドには全くそれがないんです」。各自が思い思いに蒸気浴を楽しみ、会話のきっかけにもなる。その発見から、サウナヘヴンならではの名物が生まれる。「退出時に他の人のために一杯のロウリュを行う」。これをルールとして導入したのは、おそらく当時の日本では初の試みだった。「セルフロウリュへの罪悪感をなくしたい」。そんな思いが形となった。サウナ室の設計、空気の循環、すべてにフィンランドの思想を取り入れ、サウナ愛好家の“ツボ”を突く場所が、少しずつ完成していった。

 サウナ以外に、もう一つ“熱くなる場所”がある。趣味はプロレス観戦。中でも大日本プロレスの熱烈なファンだ。「デスマッチが本当に好き。ただ過激なだけじゃなくて、感動があるし、ものすごくエキサイティングなんですよね」と、目を輝かせる。ファンとの距離が近いことも魅力のひとつだ。「さっきまで血まみれで闘っていた選手が、興行後にそのまま物販に立ち、お客さんにサインを書いたり、握手に応じたりするんです」。その姿に、選手のプロレス愛がにじむ。「僕もサウナが本当に好き。それがお客様に伝わる場所にしたい。そう思わせてくれたのが、大日本プロレスでした」。

 「サウナは“大人の公園”だと思うんです。みんながルールを守って遊び、コミュニケーションをとる」。この比喩が妙に腑に落ちた。一人でも、大勢でも楽しめて、新しい出会いが待っていることもある。「僕たちは言わば遊具のような存在。ジャングルジムが動かないように、僕たちもここでお客さまを待ち続けます」。そう語って、少年のように笑う表情が、施設への愛を物語っていた。

 サウナ室を出るとき、一杯のロウリュを欠かさない人たちがいる。ちくわ店長が本場フィンランドから持ち帰った想いが、ゆっくりと根付いている。ここは間違いなく“サウナの街”になる。開店前から黙々と仕込みに汗を流す、大きな背中にそれを確信させられた。

 ◇岡見 知彦(おかみ・ともひこ)1980年(昭和55)10月24日生まれ、茨城県守谷市出身の45歳。“ちくわ”の愛称は、かつて飼っていた白と茶色の愛犬(キャバリア)に由来する。2023年12月に「サウナヘヴン草加」の開業に携わり、サウナ室の温度管理から運営全般まで担当。趣味はプロレス観戦で、施設内にはグッズも点在。デスマッチ専用のサウナハットも開発した。
Instagram:https://www.instagram.com/hoppy___boy?utm_source=ig_web_button_share_sheet&igsh=ZDNlZDc0MzIxNw==
X(旧Twitter):https://x.com/saunaheaven

【サウナへヴン草加】
・住所:埼玉県草加市高砂1-10-45高梨ビル1F(東武スカイツリーライン「草加駅」東口より徒歩5分)
・営業時間:平日15:00~23:00/土日祝9:00~23:00
・公式HP、SNS:公式サイト:https://sites.google.com/view/saunaheavensoka/
Instagram:https://www.instagram.com/sauna__heaven/
X:https://x.com/saunaheaven

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