【悼む】唐十郎さん死去 ゴールデン街を舞台に包丁持って走り回った男が、我が子の舞台にとめどない涙
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この男を語るとき、どう表現すれば的確なのかと戸惑う。いわば「現代演劇のカリスマ」である。50年近く前から今に至るまで若者たちに多大の影響を与えてきた。「俺の方こそ正当な歌舞伎役者」とうそぶいたり、どこか不気味さ漂うところから「現代の怪人」とも呼ばれた。
自他ともに認めて昔から呼ばれ続けてきたのは、今ではタブーの表現ながら「現代の河原乞食」。紅(あか)テントを引っ下げて都内のあちこちや海外にまで出没した。露骨に政治的な言動を口にすることは控えていたが「反抗心」「反権力」「異端」「エネルギー」といった要素は、1968年に新宿・花園神社を追われ、翌年、新宿中央公園で紅テントが警察機動隊の襲撃を受けたあたりから培われたものだろう。
唐十郎、李礼仙(故・麗仙)、四谷シモン、麿赤児、不破万作、大久保鷹、十貫寺梅軒の7人衆が常に型破りな怪異な演技で観客を興奮のるつぼに巻き込み、のちに根津甚八、小林薫らスターを輩出した。
1960年代後半から停滞し保守化した新劇に対して「アングラ・小劇場演劇」は群雄割拠した。寺山修司、鈴木忠志、佐藤信らきら星のような才能が競う中で唐は常に時代の寵児と呼ぶにふさわしかった。「戦後演劇は唐以前と唐以後に分けられる」とまで称された唐の演劇論集「特権的肉体論」は演劇を目指す若者たちのバイブルとなった。
唐が生まれ育ったのは東京・下町の旧万年町(現在の上野)。ここで唐独特のロマンチシズムと怪奇性と猥雑さを育んだ。「私の母親はとうに死んだ」と書いた下谷万年町を訪ね歩いてルポをつづったことがあるが、旧実家を訪ねたら唐の実母はちゃんと現存していて話が聞けた。作家とは勝手に親ですら殺してしまうものらしい。
唐の不可思議さは数々あれども、まずはその目。こちらときちんと向かい合って、こちらの目を見て話しているのだけれども、終始私を見ている目ではない。私はさながら透明人間になったかのように私を透かして、私の後ろのもっとはるか遠いところを見ている。不思議な目だ。そんな人は後にも先にも唐しか経験がない。
2012年春、自宅の玄関先で転倒して脳挫傷となり、その後はずっとその後遺症に悩まされ、最期まで脊柱管狭窄(きょうさく)症の痛みに悩まされ続けてきた。だが、怪我をする以前までの唐の肉体の強さは誰にも負けないものがあった。若い頃はケンカ早いことでも有名で、夜な夜な飲みに行った新宿ゴールデン街に行くと「ゆうべは唐さんが出刃を手にここの路地を走り回っていた」なんて物騒な話を聞いた。普通は自分の血を見ると戦意を喪失するものだが、唐は逆。血を流すと一層強くなった。
こんな男とケンカはしたくないなと心底思ったものだが、あるとき、故菅原文太と私の3人でゴールデン街に飲みに行ったとき、1人の若い男に唐がケンカを売られたことがあった。つかみ合いになり2階の階段を転げ落ちるように外へ飛び出したとき、間に割って入ったのが文太さん。そのときの文太さんの格好が白のトレンチコートのエリを立て袖を通さずに肩に掛けた姿。さながら東映のやくざ映画を見ているようだった。
だが、ケンカをするほどの体力こそ人並み以上にあったが、実際は気の小さい普通の男ではなかったのか。あるとき新宿で二人で飲み歩いているときに、歌舞伎町の路上で個人タクシーの運転手さんが、暴力団風の男3人に取り囲まれて殴る蹴るの暴行を受けているところに遭遇したことがある。すかさず私は「唐さん、助けに行こうよ」と声をかけた。実は日ごろの彼のケンカ強さを見聞きしていたからその強さと気風(きっぷ)に期待して私は高みの見物を決め込もうとタカをくくっていたのだ。そしたら意外なこと?に唐は「嫌だよ、怖いよ」と後ずさりして私の袖を引いたのだった。当然ながらその運転手さんは殴られっぱなしになってしまった。
それ以来、唐は私のことを“ケンカの強い男”だと勝手に誤解してくれたから笑ってしまう。
2018年5月、唐と深い縁のある新宿・花園神社境内の紅テント、唐組公演で自作「吸血姫」が47年ぶりに再演された。元ブリキの自発団のヒロイン女優だった銀粉蝶を初の客演に迎え、唐の2度目の妻との間に生まれた長女大鶴美仁音と次男大鶴佐助がテント初共演の形でその存在を強くアピールした。
作品は唐初期の作品らしく堂々と力強いものだった。映画「愛染かつら」のヒロイン高石かつえや旧満州(現中国東北部)時代に暗躍した川島芳子、日本の義父川島浪速らが大正時代の関東大震災の後遺症を引きずっているという、いわば相変わらず分かりづらい内容ながら、唐初期の作品独特の他人の解釈をはねつけるような力強い言葉、独特のレトリック、論理を超越した観客を引き込む力業には知性と狂性の迷路に引きずり込んでいく腕力がみなぎっている。独特の唐マジックとロマンチシズムだ。
唐はその初日にテント後方の椅子に座って観劇して、あふれる涙を拭おうともせずにじっと見入っていた。目からどんどん涙があふれ出ている。作品に対する思い入れはもちろんのこと、無茶で元気だったあの頃のこと、、前妻李礼仙(故麗仙)と離婚して再婚した2人のわが子たちが今、眼前で頼もしい成長の証として立派に舞台を務めている、などなどに深い感慨と感傷が込み上げて、走馬燈のように頭の中をかけ巡ったのではないだろうか。
ふと昔、唐が幼い二人の子を自転車の前後に乗せて、遠く後楽園まで走って遊園地で遊ばせた話を聞いたことを思い出した。「自転車を走らせながら、あれっ、この風景、前にもやったよなと一人ごとを言ってて自分で笑っちゃったよ」。李との一子、大鶴義丹を幼いころ自転車に乗せて後楽園まで行ったことを思い出していたのだ。
唐にはことあるごとに、よく原稿の執筆を依頼した。はい、と言って渡された原稿は昔、原稿用紙ではなくて新聞に挟み込まれた広告のチラシの裏の白い部分に小さい字でびっしり書き込まれたものだった。あんな人はほかに誰もいない。
忘れられない連載の一つがある。紅テント公演「ベンガルの虎」を海外のバングラデシュで行った1973年のこと。帰国した唐にすぐさま原稿を依頼、タイトルは?と聞くとすかさず「風にテント、胸には拳銃」と答えた。なんとカッコいい題名ではないか。今でも鮮明に覚えている。
よく一緒に酒を飲んだ。飲むとお互い長っ尻で、最長は連続25時間一緒に飲み続けて最後は町の銭湯のタイルの上で2人とも裸でぶっ倒れたことがある。今では懐かしい思い出だ。合掌。
(スポニチOB、演劇評論家・木村 隆)
=敬称略=
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