96歳、現役理髪師 映画で有名になっても代金変わらず72円

[ 2009年4月1日 08:32 ]

北京市内の自宅で、男性の髪の毛をバリカンで整える靖奎さん

 北京市の中心部、故宮近くの伝統的な横町「胡同(フートン)」で、北京最高齢とされる数え年96歳の現役理髪師が活躍している。この道約80年の靖奎(セイ・ケイ)さん。約3年前に自らが主演した映画「胡同の理髪師」が国内外で話題となり、一躍有名人となった。

 仕事場は約10平方メートルの自宅長屋の一室。妻と自分のベッドの間にできたわずかな空きスペースで、20年使い続けているバリカンとかみそりで客の髪や顔を整える。15歳で理髪師になってからこれまでに延べ数万人を散髪。京劇の名優、故譚富英(タン・フエイ)や国民党軍の将軍ら「歴史上の人物」も多く担当した。
 真っ白な髪に気品のある顔立ち。今でこそ耳は遠くなったが、若いころはかなりの“イケメン”だったに違いない。実際、1930年代ごろ北京市内にあった「カフェ」の日本人ウエートレスからは、よく食事に誘われたという。
 詳しい生年月日は定かでない。理髪師の日常の営みを描いた映画は、中国で2006年、日本では08年に公開された。
 映画で名が知られるようになっても1人5元(約72円)の散髪代の値上げはしない。「相手が払えるだけでいいのさ。金がなければもらわない」と靖さん。「自分にとっては金持ちも貧乏人もみんな同じ。客は友達みたいなものだ」と頓着しない。
 400人いた常連客も、8人の弟子も皆この世を去った。「そりゃ、良い気持ちはしないよ…」
 それでも靖さんの1日は変わらない。朝は午前6時に起床。午前中は客が来れば客の相手、午後は「頭の体操のために」5時間マージャンをし、9時までには床に入る。食事の時間も毎日同じ。変わったことといえば、映画出演で外国人客が訪れるようになったことぐらいだ。
 長生きの秘訣は規則正しい生活と1日1箱のたばこ。それから「人にしたことは自分に返ってくる」ため、他人の悪口は言わないことだ。
 経済発展に伴う再開発や昨年の五輪開催で、北京の古い町並みの多くが取り壊された。30年住んでいる長屋は強制収用を免れたが、靖さんの心は穏やかではない。
 「でも、昔の思い出は全部頭の中に残っているからいいんだよ。仕方ないさ」。時折「ケホケホ」とせき込みながら、おいしそうにたばこをくゆらす。そんな靖さんを、映画のワンシーンのために撮ったという本人のモノクロの「遺影」が、部屋の片隅から優しく見下ろしていた。(共同)

「美脚」特集記事

「中居正広」特集記事

芸能の2009年4月1日のニュース