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井岡 死闘V3、国内初の無観客世界戦 終盤乱打戦制し判定3―0 視線は統一戦へ

[ 2021年9月2日 05:30 ]

WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦   ○王者・井岡一翔 判定3―0 同級2位フランシスコ・ロドリゲス● ( 2021年9月1日    大田区総合体育館 )

12R、ロドリゲス(左)と打ち合う井岡
Photo By 代表撮影

 WBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(32=志成)が指名挑戦者の同級2位フランシスコ・ロドリゲス(29=メキシコ)を3―0判定で下し、3度目の防衛に成功した。昨年12月のV2戦で日本ボクシングコミッション(JBC)の検査体制の不備などからドーピング騒動に巻き込まれたが、国内初の無観客開催となった世界戦で鮮やかに再スタート。自己の持つ世界戦勝利数の日本記録を18に更新し、改めて王座統一に意欲を見せた。

 観客の拍手も歓声もない空間から日本人男子で唯一の4階級制覇王者・井岡が新たな一歩を踏み出した。元WBO&IBF世界ミニマム級統一王者で最近5年間負けなし、15連勝中だった難敵ロドリゲスを苦しみながら撃破し、V3。「無事に勝てたことと、こういう中で不安はありましたけど、無事に終えたことに感謝の気持ちです」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 序盤から挑戦者が仕掛けてくるのは想定通りだった。ボディーで削り、中盤からは左ジャブもヒットしたが、完全に主導権を握ることができず、終盤は接近しての打ち合い。「判断が難しく、流れ的には負けてもおかしくない試合。これまでの経験で勝てた」と分析してみせた。

 熱望する他団体王者との統一戦を実現するために、過去の苦い思い出を払しょくする必要があった。昨年12月。“史上最高の日本人対決”と呼ばれ、年間最高試合にも選ばれた一戦で田中恒成(畑中)に8回TKO勝ち。ところが、その試合でJBCのずさんな検査でドーピング違反を疑われた。4月には警察の家宅捜索を受け、週刊誌には誤った事実が報じられた。SNSを通じて家族への誹謗(ひぼう)中傷もあり、心を痛めた。

 自らの拳で幾度も苦難を乗り越え、道を切り開いてきた男が「自分ではどうすることもできない」と思い悩み、「人生が終わるのではないかという気持ちになった」と苦しみを味わった。最終的には倫理委員会が「ドーピング違反は認められなかった」と結論付け、JBC側の謝罪を受けて気持ちに区切りをつけた。

 8カ月ぶりのリングでベルトを守った井岡は「内容には満足していないけど、次につなげることができた。統一戦を実現して、この階級で井岡一翔が一番強いことを証明したい。今やれるならIBF王者しかないので、年内にアンカハスとやりたいと陣営には自分の気持ちは伝えてあります」と、次のステージに視線を向けた。

 【井岡の経過】
 ▼20・12・31 田中恒成(畑中)に8回TKO勝ちし、2度目の防衛に成功
 ▼21・1・22 田中戦でタトゥーが露出した井岡に対し、JBCが厳重注意処分としたことを発表
 ▼4・26 田中戦のドーピング検査で井岡の検体から大麻成分が検出されたと一部週刊誌が報道。井岡の所属事務所は否定
 ▼5・1 田中が所属する畑中ジムがJBCに質問状を提出
 ▼5・19 JBCがオンラインで会見し、倫理委員会の答申書を公表。「井岡にドーピング違反はなかった」と結論づける。それを受けて井岡が会見。体制改善と再発防止を訴える
 ▼5・28 JBCが公式サイトに「おわび」文書を掲載
 ▼5・31 井岡の所属するAmbitionジムがJBCに上申書を提出。役員の退任を求める
 ▼6・1 WBOが井岡陣営にロドリゲスとの対戦交渉を開始するよう通達。
 ▼6・25 井岡が日本外国特派員協会で会見。JBCから直接謝罪を受けていないことを明かし再発防止を訴え
 ▼7・12 JBC永田有平理事長が会見し、報道陣の前で井岡本人へ謝罪
 ▼7・15 Ambitionジムが志成ジムに名称変更し、東京都目黒区に移転オープン
 ▼8・10 ロドリゲスとの防衛戦を大田区総合体育館で行うことを発表
 ▼8・19 ロドリゲス戦の無観客開催を発表

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