比嘉が「無期限」で拳四朗が「3カ月」のワケ JBCのライセンス停止処分はなぜ期間が違うのか

[ 2020年12月18日 09:00 ]

JBCからの処分を受け、会見した寺地拳四朗
Photo By 代表撮影

 泥酔しての不祥事を一部週刊誌に報じられたWBC世界フライ級王者・寺地拳四朗(28=BMB)に日本ボクシングコミッション(JBC)から3カ月のライセンス停止と制裁金300万円の処分が科された。被害者とは示談が成立しており、JBCからの裁定も下ったので、後は本人が話した通り、少しずつ信頼を取り戻していくしかない。ただ、ネットでは相変わらず厳しい批判が続いている。特に体重超過で王座剥奪となった元WBC世界フライ級王者・比嘉大吾(25)と比べて処分が軽いという指摘は多い。

 18年4月にV3戦の前日計量で体重を超過した比嘉に対し、JBCは無期限ライセンス停止処分を科した。「無期限」は同年3月に山中慎介(帝拳)との再戦で体重超過したルイス・ネリ(メキシコ)と同じだったため、厳罰のイメージが強く残ったが、日本のリングから事実上の永久追放だったネリとは全くの別モノ。比嘉に対しては「体調が完全に戻るまで期限を定めない」という意味の無期限であり、復帰を前提としたものだった。実際に復帰まで1年10カ月を要したが、JBCが処分を解除しなかったのではなく、比嘉と当時の所属ジムのコミュニケーション不足などから解除手続きが遅れたことが一番の理由だった。

 プロボクシングを統括するJBCは、これまでも競技と関係しないことであっても刑事事件として起訴されたり、有罪判決を受けた場合には厳しい処分を下している。しかし、今回の拳四朗は起訴どころか、逮捕事実もない。防犯カメラの映像から他人のマンション敷地内に立ち入ったことは間違いないようだが、示談が成立したために逮捕を免れたという訳でもない。週刊誌報道がなければ、JBCとしては知ることもなかった出来事だった。もちろんバレなければ良いということではないが、警察や司法によって詳細かつ正確な事実が明らかにされていない状況での処分は、JBCとしても難しかったのではないか。とは言え、現役王者の不祥事が発覚した以上、看過することはできず、倫理委員会を経て「プロボクシングの社会的信用を著しく棄損した」として処分に至った。

 3カ月という期間は短いと受けられるかもしれないが、拳四朗は昨年12月から試合ができておらず、ライセンス停止期間を長くすれば、選手生命にも影響するかもしれない。制裁金を高額にする一方でライセンス停止期間を短くすることでバランスをとったのだろう。仮に白紙となった久田哲也(ハラダ)との防衛戦が再設定されるとすれば、久田にも早くチャンスが巡ってくることになる。

 JBCが定めるルールは競技の安全性、公平性などを担保することを目的に定められており、決して処罰するために存在する訳ではない。もちろん、ルールを破れば、罰はあるが、それは他のスポーツでも同じ。現状のJBCルールには批判もあるようだが、様々な制約は基本的にはボクサーを守ることに主眼を置いている。比嘉のケースにしても、今回の拳四朗のケースにしても、実はJBCのスタンスに違いはなく、彼らにとって最善の選択をした結果が「期間」に表れただけなのである。拳四朗に対し、通算48時間以上200時間以内の社会貢献活動を義務付けたことは「信頼を少しでも回復してほしい」という“親心”だったとさえ思える。

 刑事事件にならなかったとは言え、酒に酔って他人の自動車を傷つけるという行為は確かに許されることではない。ただ、報道が間違ったイメージを与え、必要以上の批判を集める結果になったことも否めない。報道に携わる者として自分自身も襟を正さなければと思っている。(記者コラム・大内 辰祐)

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