東京出身の女子マネジャーはなぜ片道1時間の山梨学院野球部へ?進路選択で妥協なし「執念の調査」
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【元公務員記者の目】 2020年にスポニチに入社した記者の前職は地方公務員。福岡県福津市の教育委員会で3年間、スポーツ担当の仕事に励み、スポーツを「する・みる・ささえる」の活動を通して市民の生活向上を目指した。連載「元公務員記者の目」ではアマチュア野球界の「ささえる」人々の活躍を伝える。第4回は今春の選抜で8強入りした山梨学院の吉野音羽マネジャー(3年)。東京都日野市出身ながら高校は「越境入学」で山梨学院に進んだ。(取材=アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)
かつて、高校野球は地元選手でチームを構成する「地域性」を重要視する声が多勢を占めていた。全国から選手を集める強豪校は「外人部隊」と称されることもあった。ただ、近年のアマチュア野球界の構造は大きく変化している。
花巻東(岩手)で史上最多の高校通算140本塁打を放った佐々木麟太郎内野手はプロ志望届を提出することなく海を渡り、スタンフォード大に進学。さらに仙台大の右腕・佐藤幻瑛投手は4年生になる今年からペンシルベニア州立大に編入。逸材たちはより良い環境を求めて渡米も選択肢の1つとしており、この流れは高校にも波及する可能性がある。日本の強豪校に求められるのは「地元縛り」ではなく、トッププロスペクトを成長させる環境づくりにある。
だからこそ、思う。「中学生が日本中のどの高校を進路先に選んでもいいじゃないか」と。人々が働く場所に日本のどこを選んでも文句を言う人はいない。学生たちの進学先も、それと同様に本人と家族の意思で決めるべきもので他人がどうこう言う問題ではない。
全国から逸材が集結する山梨学院を支える吉野音羽マネジャー(3年)は「越境入学」の自由を選択した。東京都日野市出身。小学時代に早実(東京)のスラッガー・清宮幸太郎(現日本ハム)の活躍を甲子園で観戦したことをきっかけに「マネージャーとして甲子園に行くのが夢になった」と憧れた。安易に東京の野球強豪校に進学するのではなく、中学時代から視野を広く進路選択に向き合った。
東京を中心に各校野球部の公式戦観戦を重ね、マネジャーの募集状況を調べた。女子マネジャーが記録員としてベンチ入りできているか、もチェック項目の1つだった。そして、県大会を戦う山梨学院の試合を観戦した際に「常に全力プレーの姿勢、ベンチ外の選手も全力で応援する姿勢に惹かれました」と一目惚れした。祖父母の家が山梨県大月市にあることも追い風だった。入学後は祖父母の家に住み、最寄りの大月駅から甲府市内の最寄り駅まで片道約1時間をかけて通学している。練習試合の際などは始発近くの電車に乗ることもあるが「青春真っ盛りの高校生の時にみんなで1つになれる高校野球が好き」と選んだ道に悔いはない。
高校野球マネジャーの一般的なイメージは晴れ舞台の甲子園で記録員としてベンチ入りする姿や、アルプス席で選手を見守る姿だろう。しかし、現実は選手の練習と同様に地道な業務の積み重ねで「キラキラした青春」はほんの一場面。凍てつく寒さの冬も、炎天下の夏も選手を支えるためにグラウンドに立つ。それでも「キラキラした世界じゃないことは分かっていました。“ドラマの世界じゃないよ”って、いろいろな人から言われていました。でも、試合で勝った選手の姿はキラキラしていますし、みんなとの何気ない日常が後々、キラキラした思い出に変わるんだろうなと思います」と笑う。
マネジャーとしての矜持に思わずハッとさせられた。「野球部のマネジャーは一歩間違えたらただのお手伝いさんですし、一歩間違えたらただの雑用になってしまうと分かっています。だからこそ、選手の小さな頑張りを認められる存在でありたい。選手が日々の地道な努力を認めてもらえる機会ってあまりないと思うんです。けれど、誰かが見守っていることで何かが良い方向に変われると信じています」。社会人が働く会社のような、組織の成果を支える真の意味での“マネジャー”を目指している。
今春選抜では開会式でプラカードを持ってチームを先導し、記録員として憧れ続けた甲子園で初めてベンチ入りした。中学時代に思い描いた夢を実現し「本当に夢の中という感じでした」と万感の思いで振り返る。青春を懸けた計画と実行は集大成が迫る。最後の夏に向け「感謝の気持ちを忘れずにこれからも頑張っていきたい」。第2の故郷で送る青春の日々はまぶしいほどにキラキラと輝く。
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