【内田雅也の追球】満月前夜の満塁明暗

[ 2026年5月2日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3―5巨人 ( 2026年5月1日    甲子園 )

<神・巨(6)>6回、好機に二ゴロ併殺打に倒れる福島(撮影・岩崎 哲也)
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 右翼から左翼に強風が吹いていた。風向は浜風と同じだが、相当に強く、冷たかった。5月のメイストーム(春の嵐)か。寒い夜だった。左翼席後方には満月前夜の丸い月が上がっていた。

 寒さのなか、2点ビハインドの9回裏を迎えても甲子園の阪神ファンは席を立たずに残っていた。3番からの打順で反撃を期待したが、クリーンアップトリオはそろって凡退し、阪神は敗れた。

 「あと一打」が出なかった。先発の村上頌樹が見たこともない乱調で、3回まで5点を失った。2回表は3連続四死球の満塁から2点打。3回表はボビー・ダルベックに3ランを浴びた。開幕戦でも被弾した新外国人にまたも打たれた。

 それでも接戦に持ち込み、最後まで食い下がった点はたたえられていい。敗戦後、監督・藤川球児も「ゲームの形はつくった。チャンスをつくってね」と静かに話した。

 満塁の明暗があった。

 1回裏、3連打での1死満塁。大山悠輔が初球を打った一打はボテボテでやや三塁寄りの投ゴロ。俊足の福島圭音が本塁にヘッドスライディングしたが間一髪アウト。リプレー検証でも判定は変わらなかった。続く小幡竜平は三振に倒れた。

 2回表、無死満塁での守り。阪神内野陣はバックホームの前進守備を敷いた。村上が投げる試合で1点もやらないという姿勢だろう。だが平山功太のゴロは横っ跳びする遊撃・小幡の右をわずかに抜け、中前への2点打となった。二遊間が二塁上での併殺を狙うシフトなら遊ゴロ併殺だったろう。1失点ですんでいたかもしれない。

 3回裏は2死満塁から坂本誠志郎が左前打を放ち、2点を返した。

 6回裏、1死満塁。代打・前川右京が四球をもぎ取り、押し出しで1点。なお満塁から福島の好打は二塁正面のゴロで4―6―3併殺となった。

 満塁ではないが8回裏も1死二、三塁と一打同点の好機はつくった。

 映画『スリランカの愛と別れ』でスリランカ人マダムのセリフにある。演じた高峰秀子の『わたしの渡世日記』(文春文庫)で読んだ。「インドでは、満月より十四日の月を喜ぶわ。満月は明日から欠けはじめるけど、十四日の月にはまだ明日がありますからね」

 日本でも古くから満月前夜の月に希望や期待を込める。阪神ももう少しなのだ。藤川も「また、明日ですね」と静かに言った。 =敬称略=
 (編集委員)

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