【内田雅也の追球】雪片が見えた美しさ

[ 2026年4月30日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2―0ヤクルト ( 2026年4月29日    神宮 )

<ヤ・神(5)>3回、岡城の二塁打で一塁から生還する福島(撮影・北條 貴史)
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 阪神勝利の立役者は文句なしで高橋遥人である。3安打無四球で今季3度目の完封をやってのけた。4月の3完封はあの江夏豊でもやったことはない。江夏の「28」の上をいく「29」番が曇天の神宮で光っていた。

 江夏は「仲間がいて、素晴らしい青春時代を過ごせた」と振り返る。高橋をもり立てた選手たちを書いておきたい。

 2回裏の守り。先頭ドミンゴ・サンタナの中前へ抜けようかというゴロを熊谷敬宥は逆シングルで追いつき、回転しながら一塁送球した。ワンバウンドをすくい上げた大山悠輔のスクーピングと合わせた美技だった。

 中野拓夢が前夜の自打球負傷でスタメンを外れ、熊谷は今季初めて二塁を守った。内外野多くの守備位置をこなすなか、いかに普段から準備をしているか。隠れた不断の努力に賛辞を送りたい。

 3回表の先取点は2死無走者からだった。福島圭音が中前打で出た。盗塁警戒で初球、2球目、3球目と山野太一からけん制球をもらった。打者への集中力が薄れただろうか。3球目、甘くなった直球を岡城快生が左翼へ二塁打した。俊足の福島が長駆生還した。

 福島の得点は5点目で、うち3点が2死からだ。2死でも福島が出れば得点が入る予感が漂う。そして生還すれば勝つ。これで4勝1敗である。

 追加点も6回表の2死からだった。一、二塁で大山がカウント0―2から見極め、山野から初めて四球を選んだ。打席での大山は辛抱と自制心に優れ、リーグ最多の四球はこれで17個目である。

 この四球で満塁とし、走者が三塁に進んだことで、続く内野安打(小幡竜平の一塁強襲安打)で2点目が入ったのだ。
 野球ではこうした選手個々の貢献の積み重ねが物を言う。ゲームもシーズンも勝負は紙一重だ。優勝チームでも多くは勝率5割台なのだ。

 <野球のゲームは舞い散る雪片に似ている>とコラムニスト、ジョージ・F・ウィルが『野球術』(文藝春秋)に書いている。<それは、はかなく消える。そして、雪のひとひらひとひらは、すべて異なった形をしている>。これを見極めるのが首脳陣はもちろん、野球記者の役目だろう。<鍛えられた目には、野球の美しさが見える>。

 「昭和の日」だった。昭和から平成、令和と時代は移れど、変わらぬ野球の美しさを見た気がした。 =敬称略=
 (編集委員)

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