【内田雅也の追球】受けずに受けいれる。

[ 2025年10月15日 08:00 ]

19年、雨の横浜でCSファーストS突破を決めて喜ぶ藤川=当時の紙面
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 阪神のクライマックスシリーズ(CS)には雨の記憶が多い。特にDeNA相手に思いだす。

 2017年、甲子園でのファーストステージ(S)は先勝の後、雨のなか連敗して終戦。特に第2戦は土砂降りのなか泥だらけになった。8年前のきょう15日のことだ。

 2019年は横浜でのファーストSは1勝1敗の後の第3戦、激しい雨のなか藤川球児が8、9回を締めて2―1で競り勝った。藤川がぴょんぴょん跳びはねていた。

 今年はファイナルSを甲子園で戦う。この先数日、天気予報が雨を告げている。秋雨との戦いの日々でもある。

 阿久悠は阪神を題材にした小説『球心蔵』(河出文庫)で甲子園について<雨や風が神になったり悪魔になったりするのがいい>と書いていた。

 今や監督の藤川は雨を味わう姿勢でいる。みやざきフェニックス・リーグのため宮崎入りした今月5日、「季節を、雨を楽しむ」と話した。「雨も多くて調整が遅れるという人もいるだろうけど、視野をもう少し広げてみれば、日本には大事な四季がある。雨が降った時をどう楽しもうかな……とは思ってます」

 雨の日に晴れを思うのではなく、雨を楽しむのである。詩人・書家の相田みつをの有名な詩に「雨の日には 雨の中を 風の日には 風の中を」がある。『生きていてよかった』(角川文庫)で<雨の日には、雨をそのまま全面的に受け入れて、雨の中を雨と共に生きる。風の日には、風の中を、風といっしょに生きてゆく。特別なことではない、ごくあたりまえの生き方のことです>と解説している。禅や茶道の心のようである。

 何度か書いてきたが、それがenjoy(楽しむ)本来の意味である。良くも悪くも受けいれ、享受するわけだ。だから藤川は選手たちに「楽しもう」と声をかけた。

 ただし、勝負事では受けてはいけない。受け身の姿勢では相手にやられる。史上最速での優勝、2位DeNAには13ゲーム差……栄光は自信として胸にしまいたい。新たなステージに再び挑む。藤川も「立ち向かう」と繰り返してきた。

 受けずに、受けいれるのである。

 開幕前日のナイター練習。湿った浜風が吹いたが雨は降らなかった。午後5時半に始め、7時過ぎには終えた。さあ、雨も風も味わう秋(とき)である。 =敬称略= (編集委員)

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