【内田雅也の追球】歓迎したい「快打正面」

[ 2025年8月3日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5―1ヤクルト ( 2025年8月2日    神宮 )

<ヤ・神>2回、長岡は遊直に倒れた(投手・才木)(撮影・木村 揚輔)
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 投手は打球がどこに飛ぶのか、打球の質までコントロールできない、という考え方がある。快打が野手の正面を突いたり、打ち取った打球がポテン安打になったり、運不運がつきまとう。

 セイバーメトリクスでは被打率ならぬ被BABIPとして、本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合(インプレー打率)という指標がある。さらに野手の守備とは関係なく、投手のみに責任のある奪三振、与四球、被本塁打だけで評価する指標DIPSやFIPもある。

 ならば、この夜6回1失点で9勝目をあげた阪神・才木浩人は幸運だったのだろうか。

 立ち上がりから快打された打球が野手の正面など守備範囲によく飛んでいた。1回裏は先頭・岩田幸宏の投手返しライナーや内山壮真の遊直があった。2回裏は古賀優大、長岡秀樹と続けて遊直。5回裏の古賀の中堅後方への飛球も、6回裏の内山右飛もライナー性のいい当たりだった。

 ロッテやヤンキース、阪神にも在籍した伊良部秀輝は<正面のいい当たりが調子のバロメーター>と歓迎していた。代理人だった団野村が『伊良部秀輝――野球を愛しすぎた男の真実』(PHP新書)で記している。

 伊良部は阪神時代に語っていた。「見た目は三振の方が格好いいだろうけれど、僕の場合はカーンと打たれても、野手の正面を突く方がいい」

 なぜなら「きちんとしたフォームで投げていれば、いい当たりをされても野手の守っているところにボールは行くものだから」。これを「快打正面の原則」として、当欄でも何度か書いてきた。

 才木は好調を感じ取っていたか。打たせて取って6回76球。右手中指の爪に異常があり降板したが、堂々の投球だった。

 この日は打者追い風に低気圧もあり、打球がよく飛んだ。阪神は3年ぶりの4本塁打。才木は内山に浴びた1本。被本塁打は規定投球回到達者でリーグ最少の3本目だ。

 ただ、伊良部は運を否定しなかった。<その運を「味方につける」ことが大切なのであり、ヒデキによれば、それは「自分はいかに基本に忠実に野球をやるかにかかっている」のである>。

 前回登板で完封した才木を監督・藤川球児は「フォームが良くなった」と話していた。やはり、伊良部の言う通りなのだろう。さらに基本に忠実という誠実さで運も味方していた。 =敬称略=
 (編集委員)

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