【内田雅也の追球】4番らしいボテボテ

[ 2025年7月10日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3-1広島 ( 2025年7月9日    マツダスタジアム )

<広・神(14)>3回、二ゴロに倒れるも全力疾走をみせ、勝ち越し打点を挙げる佐藤輝(撮影・椎名 航)
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 1―1同点の3回表1死満塁、阪神・佐藤輝明は二ゴロを転がし、併殺崩れの間に三塁走者が本塁に還った。これが勝ち越し決勝点である。

 1ボール―2ストライクと追い込まれてから大瀬良大地の外角シュート気味速球に食らいついた一打だった。

 2回表に内角速球をライナーで右翼席に運ぶ22号先制ソロも見事だったが、このボテボテのゴロに佐藤輝の成長を見る思いがする。

 強振しての三振では何も事が起きない。二遊間は二塁併殺の守備体形で、前に転がせば、併殺崩れでの得点が望める。そんな姿勢だったろう。

 打点が付く併殺崩れは立派な得点方法である。金本知憲も現役当時に出した著書『覚悟のすすめ』(角川書店)などで「ボテボテの効用」を説いている。

 監督時代の2017年の本紙新春インタビューではチャンスで「何とかする」という打撃姿勢を語っていた。「打てなくても併殺崩れを打つとか、そういうことが分かってくれば打席内で余裕が出る。最初はヒットを打ちにいっていたけど、追い込まれてからはもうヒットを打とうとは思わない。最低限の仕事をしようと切り替えていた」

 何しろ金本は現役時代、1002打席連続無併殺打のプロ野球記録保持者だった。併殺を避ける打撃、全力疾走を実践してきた。この夜の佐藤輝も一塁へ全力で駆け抜けた。金本のように、勝てるチームの4番打者になろうとしている。

 もちろん、完璧ではない。7回表1死三塁では高めボール球速球を振って三振している。一方で9回表1死にはボテボテの二ゴロに疾走して内野安打をもぎ取っている。完璧な打者などいない。人間なのである。

 この日は米政治家、連邦最高裁判所長官を務めたアール・ウォーレンの忌日だった。雑誌『スポーツ・イラストレーティッド』に語った有名な言葉がある。「私はいつも、新聞をスポーツ面から読み始める。そこには人間が成し遂げたことが記録されているからだ」

 なぜか。「1面に載っているのは、人間がしでかした過ちばかりだ」

 ただ、ウォーレンは戦時中に推進した日系人の強制収容を戦後に出した自伝で「深く後悔している」と過ちを認めた。

 野球は失敗の多いスポーツだ。佐藤輝は失敗から学び、達成者になろうとしている。 =敬称略=
 (編集委員)

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