【内田雅也の追球】「謙虚」になって再出発

[ 2025年6月15日 08:00 ]

交流戦   阪神4―5楽天 ( 2025年6月14日    楽天モバイル )

<楽・神>延長10回、石原の打球にチャージをかけた左翼手の森下(撮影・平嶋 理子)
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 宮城野の杜(もり)がぬれていた。青葉雨という言葉がある。東北に梅雨入りをもたらした雨は試合終盤から強くなった。それも阪神が守っている時に強く降った。

 四球や悪送球が絡み、逆転を許した7回裏に雨脚は強まった。9回裏、3四球で満塁を招いた時も強く降った。そして2死から3連打で終幕となった延長10回裏である。

 雨に泣いた、などと書くのは言い訳無用のプロらしくもない。ただ、現実に雨の不運はあった。

 5連敗。しかもすべて逆転負けである。阪神では1976(昭和51)年以来49年ぶりらしい。

 監督・藤川球児が「心臓」と位置づける救援陣が相次いでリードを守れない。春先には信じられないことが起きるのがペナントレースである。

 今季両リーグ最長5時間10分の激闘をサヨナラで落とし、藤川は「選手たちは皆、必死にやっている」と言った。

 たとえば、森下翔太である。3―1の6回表2死一、三塁、ダメ押し点が欲しい打席で三振に倒れるなど6打席でポテン打1本に終わった。

 延長10回裏は先頭の難しいライナー性飛球を好捕した。だが、2死一、二塁から左前打に、本塁で刺すために「勝負」の前進チャージをかけて後逸してしまった。

 打線は先発全員の14安打を放ち、6四球を得ながら、2併殺15残塁。もう一押しが足りない。

 最後に勝ったのは1週間前の8日。勝率は6割2分5厘もあり、貯金は14個もあった。だが、やはり「一寸先は闇」の世界である。野球の神様は人の心にすんでいる。もう野球をわかった、自分たちは強い……と思った瞬間から裏切られる。

 大リーグ歴代2位の監督通算2902勝のトニー・ラルーサが「野球はいつも人を謙虚にさせてくれる」と言う。ジョージ・F・ウィル『野球術』(文春文庫)にあった。できることを真摯(しんし)にやる。愚直でも勝利への道である。

 そのラルーサはこうも語っている。「がっくりは野球に付き物だ。問題はその後だ」。藤川も「明日ですね」と繰り返した。そう、毎日が新しい日、再出発の日である。

 冷たい雨だった。だが「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」を長嶋茂雄は「雨ヲタノシミ 風ヲヨロコビ……じゃないかな?」と言ったそうだ。親交が深かったニッポン放送アナウンサー、深澤弘が著書に記している。前を向きたい。 =敬称略=
 (編集委員)

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