【内田雅也の追球】三振を愛される打者

[ 2025年4月2日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1―7DeNA ( 2025年4月1日    京セラD )

<神・D> 3回、佐藤輝は空振り三振に倒れる(撮影・須田 麻祐子)
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 アメリカで古くから親しまれている野球詩に『ケイシー打席に立つ』がある。1888年6月3日付のサンフランシスコ・イグザミナー紙にアーネスト・セア作として載ったのが初出だった。

 ホームのマドヴィルは2―4で9回裏2死から反撃し二、三塁で強打者のケイシーを打席に迎える。1、2球目とも平然と見送り、2ストライク。高まった熱気のなか、最後は<豪傑ケイシー三振に斃(たお)る>で締められている。空振り三振だった。一発逆転の夢が消え去る失敗、敗戦の詩が愛されるのは、人間的な野球らしい。

 ケイシーのように、長嶋茂雄も空振りが似合う打者だった。ヘルメットを飛ばしながらの豪快な空振り三振の写真が有名になった。

 ただし、ケイシーも長嶋も幾度も豪打、快打でチームを勝利に導いてきたから愛されたのだ。

 ならば阪神・佐藤輝明はどうか。豪快なスイングから放たれる一発が魅力だ。だから空振りも三振も仕方ないとファンもある程度は認めている。

 この夜も3打席連続三振と遊飛。開幕戦の初打席で1号2ランを放ってから15打席連続無安打で打率は1割にも満たない6分7厘。そして4試合連続マルチ三振で計10三振を喫している。

 痛かったのは1―1同点の3回裏だ。2球目が暴投となり1死一、三塁となった。外飛や内野ゴロ併殺崩れでも勝ち越し点が入るケースだった。それでもバットは空を切った。三振だった。

 三振も凡打も同じアウトだが、この場合は違う。軽打すべきとまでは書かないが、強振も過ぎてはいけない。『マネー・ボール』で描かれているように「三振を恐れるな。しかし三振はするな」というバランス感覚が必要になる。

 通算714本塁打の「球聖」ベーブ・ルースが通算打率3割6分7厘の「安打製造機」タイ・カッブに向けた言葉がある。「あんたみたいにコツコツ当てていれば打率6割は打てそうだ。だが、おれの給料はホームランを打つことで払われているんでね」

 佐藤輝にルースのごうまんさはない。ベンチでフォームを確かめる姿に苦悩が見えた。脱出を待ちたい。 =敬称略=

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 2007年4月1日にスタートした当欄は19年目に突入しました。多くの読者の皆さまに支えられてきた感謝とともに、一層の奮起を誓う次第です。 (編集委員)

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