元NPB審判員記者が見た知徳の「人間山脈」小船 80球目以降にドラフト上位級姿現す
Photo By スポニチ
11年から6年間、NPB審判員を務めた柳内遼平記者(33)が、フル装備で選手の成長や魅力をジャッジする「突撃!スポニチアンパイア」。第15回は知徳(静岡)の最速152キロ右腕・小船翼投手(3年)。1メートル98、110キロの「人間山脈」がガチンコのブルペン投球を披露した。静岡大会は6日に開幕し、シード校の知徳は13日に下田―浜松日体の勝者と2回戦を戦う。
西日傾く午後4時、知徳グラウンドに並んだナインが絶叫した。三島市と沼津市に挟まれた静岡県長泉町。「こんにちはッ!」、「すみませんでしたッ!」。初鹿文彦監督が駒大の選手時代、指導を受けた名将太田誠氏の教え「自然と会話する」が継承されている。思いは「日本一と対話することで日本一に近づく」。小船は「ありがとうございますッ!」と右中間方向に浮かぶ富士山に叫んだ。
小さな船ではない。1メートル98、110キロから最速152キロを投じる戦艦大和級。ブルペンで初対面した1メートル78の記者は、雄大さに「人間山脈」の4文字が浮かんだ。32センチのスパイクで土をはらうプレートが板チョコのように小さく見える。「100球投げます。直球を見てほしいです」と言った。
小船は甲子園経験がないため映像が少なく、都市伝説ともいえる存在。1メートル93のドジャース・大谷ら長身投手の活躍が目立つ現在でも、1メートル98は規格外級。春季大会では152キロをマーク、1試合18三振など活躍したが、スカウトの評判を聞くと「うーん…」と歯切れが悪い。「生で見た方がいいよ」と助言され、突撃を決断した。
「プレー!」が投球開始のゴング。ゆったりしたノーワインドアップで左足を上げ、左手を捕手に向けた瞬間、フォームを急加速させて投げ込む。リリース時には「大型冷蔵庫が倒れてきた」ようなど迫力。ただボール自体は「うーん…」。直球は140キロ台前半くらいで強さもない。スライダーもフォークも変化が緩やかで、「企画お蔵入り」の可能性さえ考えてしまった。
「物足りない」と思っていた時、唐突に休火山が噴火した。80球目だ。エンジンが突如うなりを上げ、体感速度150キロ超の剛球が真ん中低めへ。しなった右腕に全体重が乗り、エネルギーが凝縮された一球。そのボールが捕手のミットではじけた時、小船が全く違う投手に変身していた。そこからはアクセル全開。直球が走るとスライダー、フォークの切れ味も見違える。フォークは落ちすぎて本塁前の集音機器に直撃したほどだ。
1~79球目までは育成レベル、80球目以降はドラフト上位レベルと「2隻の船」が出現。理由は春季大会後に痛めていた右肩にあった。80球目までは「球の感覚をつかむ」と流し、それ以降は「出力を上げた」と解放。悪い方を見れば「うーん…」の評価も納得がいく。逆に今夏の静岡大会で「80球目以降」を維持すれば評価はドラフト上位級だ。
100球を投げきった小船は「最後まで笑っていられるチームは一つしかない。それを目指したい」と決意を語った。甲子園出場の夢が成就すれば、都市伝説が誰もが知る伝説に変わる。
≪高校進学時は130キロも急成長!≫父は1メートル80、母は1メートル70と長身の両親から生まれた小船は、中学卒業時に1メートル92まで成長。それでも6学年上の兄・歩さんと同じ知徳に進学した当時は、最速は130キロ程度だった。成長を続ける体を制御できず、まずは猫背だった姿勢や走り方から矯正。転機は1年8月下旬の練習試合だった。リリースの感覚をつかむと、2年春には140キロをマークし「自分に可能性を感じた」とプロを意識。入学時から6センチも身長が伸び、最速は152キロに到達し「160キロをどんどん投げられる投手に近づきたい」と見据える。初鹿監督も「27個三振を取るような投手になってもらいたい」と期待した。
◇小船 翼(こぶね・つばさ)2006年(平18)6月20日生まれ、神奈川県海老名市出身の18歳。5歳だった幼稚園年中から海老名サンダースで野球を始め、柏ケ谷中では海老名リトルシニアに所属。知徳では1年秋からエース。50メートル走7秒4、遠投100メートル。好きな食べ物は家系ラーメン。1メートル98、110キロ。右投げ右打ち。
【後記】NPB審判時代に球審を担当した際、股間に投球が直撃し試合を中断させたことがある。脂汗を流しうずくまる私。あろうことか、場内アナウンスは「ごらんのような状況ですので中断します」で客席は笑い声に包まれた。塁審から駆けつけた、いたずら心満載な福家英登先輩は「アレが無事か確認した方がええで」。言われた通りにすると、また笑い声が起こった。
ある時は左腕にファウルボールが直撃し、骨折したこともある。それでも「治る」と気にせず、次の日も試合に出た。ただ、今回はどうだろう。小船のフォークが集音マイクに直撃。はじけ飛び、内蔵のSDカードが飛び出したが「小船くん、大丈夫!簡単に直るから!」と続投を促した。投球終了後、機器を深刻な表情で見つめるカメラマン。果たして直るのか…。(アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)
◇柳内 遼平(やなぎうち・りょうへい)1990年(平2)9月20日生まれ、福岡県福津市出身の33歳。光陵(福岡)では外野手としてプレー。四国IL審判員を経て、11~16年にNPB審判員。1軍初出場は15年9月28日のオリックス―楽天戦(京セラドーム)。16年にMLB審判学校を卒業。同年限りで退職し、公務員を経て20年スポニチに入社。
野球の2024年7月5日のニュース
-
カブス・鈴木誠也 先制12号2ランでチームの連勝に貢献 通算46本で日本人4位の城島健司まであと2本
[ 2024年7月6日 05:25 ] 野球
-
ロッテ小島和哉「途中から息できず死ぬかと」体調面のアクシデントで6回途中降板も 西武戦は7連勝
[ 2024年7月5日 23:07 ] 野球
-
阪神・岩崎が小幡の落球をカバーする力投「同じような展開にしたくなかったので良かった」
[ 2024年7月5日 22:53 ] 野球
-
巨人ヘルナンデス 最愛の妻が来日「彼女のためにも頑張りたい」 29試合出場でチーム2位の6度目猛打賞
[ 2024年7月5日 22:50 ] 野球
-
阪神 先制されたら14連敗…岡田監督「1点は普通はそんな重ないんやで」
[ 2024年7月5日 22:46 ] 野球
-
佐々木麟太郎 MLBドラフトリーグで5打数無安打3三振 4号満塁弾以降は13打席連続ノーヒット
[ 2024年7月5日 22:45 ] 野球
-
巨人・岸田行倫 自身初の1試合6打点は「責任感」 追い込まれてからバット短く…9回にトドメ3ラン
[ 2024年7月5日 22:06 ] 野球
-
阪神 DeNAに競り負け、勝率5割に逆戻り 今季16試合目の延長戦で、石井が連夜の悔投…
[ 2024年7月5日 21:58 ] 野球
-
ヤクルトは今季初の2桁失点でリーグ最速40敗 先発・小川は4敗目 高津監督からは厳しい言葉
[ 2024年7月5日 21:57 ] 野球
-
ヤクルト・サンタナは下半身の張りで途中交代 高津監督「プレーできる状態であってほしい」
[ 2024年7月5日 21:55 ] 野球
-
西武 ロッテに開幕9連敗 渡辺監督代行兼GM「プロとして、この状況はあってはいけない」
[ 2024年7月5日 21:51 ] 野球
-
阪神・梅野が石井のフォークを素手ブロック 前日4日の広島戦は暴投で決勝点献上
[ 2024年7月5日 21:41 ] 野球
-
巨人・戸郷翔征 岸田6打点に「最後のホームランも完璧だった…ありがとうございますと伝えたいです」
[ 2024年7月5日 21:39 ] 野球
-
巨人・阿部監督 戸郷は「あそこまでかなと」 6打点の岸田には「こういう時もある…謙虚に」
[ 2024年7月5日 21:35 ] 野球
-
ロッテ “お得意様“西武に開幕9連勝! 主砲ソトが4打数2安打3打点 小島は西武戦7連勝
[ 2024年7月5日 21:28 ] 野球
-
屈辱…西武、ロッテに今季9戦全敗 先発・今井は右手出血が影響か制球不安定 7四死球
[ 2024年7月5日 21:28 ] 野球
-
巨人が猛暑の一戦を制す 戸郷が通算50勝、堀内に次ぐ球団2位のスピード達成 岸田が6打点
[ 2024年7月5日 21:13 ] 野球
-
巨人・戸郷翔征が通算50勝 高卒では堀内恒夫に次いで球団2位のスピード達成 チーム最多7勝目
[ 2024年7月5日 21:13 ] 野球
-
楽天・早川 早大先輩の和田に投げ勝った!3度目の正直 6回7安打11K1失点、今季5勝目
[ 2024年7月5日 20:56 ] 野球
-
ヤクルト 山田哲人が豪快6号アーチ 「甘い球を一発で仕留められた」 戸郷からは今季2発目
[ 2024年7月5日 20:31 ] 野球
























