NPB審判員は「退場!」を楽しんでいるの?高校球児からの素朴な疑問に本気回答

[ 2024年1月22日 07:30 ]

柳内記者(右)とアンパイアポーズをとる阪神にドラフト1位指名された青学大・下村
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 アマチュア野球を担当する記者は11年から16年までNPB審判員を務めた。その経験を生かし、昨年1月からアマチュア球界の注目投手のブルペン投球を球審としてジャッジする企画「突撃!スポニチアンパイア」をスタートさせた。

 昨年は阪神からドラフト1位指名された青学大・下村海翔投手、日本ハムから1位指名された東洋大・細野晴希投手ら10人のアマチュア投手に突撃。YouTubeに動画を掲載していることもあり、最近は取材先の球児に「審判っすよね?」と声をかけられることも増えた。今年に入り、ある選抜出場が当確している関東の名門を取材。取材後の時間に選手たちからプロ野球の舞台で働くNPB審判員に関する「逆質問」を受けた。
 
 ――初任給はいくらもらえるんですか?
 「育成審判を経て正式に採用された時は450万円くらいかな」

 ――ストライク・スリーのポーズはどうやって決めるんですか?
 「3年間は基本的なストライクのポーズで、4年目からは自分で考えたり先輩に教えられたり…あまり奇抜なスタイルにすると先輩から“ダサいな”みたいに言われるよ」

 いつも取材させてもらっているので、NGなしでドンドン疑問に回答した。ただ、「あ、選手たちはそんなふうに見ているのか」と驚く質問もあった。

 ――やっぱり“退場!”の瞬間は気持ちがいいですか?
 「全然全然、そんなことない!退場をコールする直前は“本当は退場にしたくない”と思っているよ。退場は出してから大変だから…。“でも、これは規則上、退場にしないといけない…”と葛藤しながらルールを守るために退場にしている。“気持ちいい”とかは全然ない。本当に大変なのは“退場”してからなんだよ」

 選手たちは思っていた回答と違ったようでポカーンとしていた。実際、退場を宣告した試合後にはNPBへの「退場報告書」の作成が義務づけられている。これには状況、プレーの詳細、会話や対応、適応した規則、他の審判員の見解などを記入する。また、しばしば審判員からの報告とチームからの報告が異なることもあり、「事情聴取」を受けることもある。そしてその後の試合では「退場した審判員」として選手たちから冷たい目線を送られる。決して「気持ちいい」ことではない。

 球児の質問から「退場」に関するイメージを知ることができたのは収穫だった。この「ギャップ」を野球ファンと共有するために記事を書こうと思った。1つの質問で1つの記事を成立させるなんて、本職の記者でも、なかなかできることではない。「球児記者」のような鋭い質問を取材現場でぶつけていきたいものだ。(記者コラム・柳内 遼平)

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