江尻慎太郎氏 ホークスOBを支援 「社長としてプロのマウンドに上がっている」

[ 2023年8月9日 05:00 ]

代表取締役社長として活躍する江尻慎太郎氏(球団提供)
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 今も江尻社長はマウンドに立ち続けている――。ホークスOBの今を伝える連載「あの人に逢鷹(あいたか)」がスタート。第1回は早大出身で爽やか長身右腕の江尻慎太郎氏(46)。営業マン、球団広報を経て今年4月1日から引退選手のセカンドキャリアや国内外アスリートのマネジメントやサポート事業などを手がける「AcroBats(アクロバッツ)株式会社」(福岡市中央区)の代表取締役社長に就任した。「社長・江尻慎太郎」の現状を、聞いた。(聞き手・井上 満夫)

 ――4月の代表取締役社長就任から、約4カ月。感じる変化は。
 「就任当初は周囲の方から“楽しんでやろう”と言われましたが、楽しめていません(笑い)。実務が大量にある中で経営も仕事も。想像以上にやることがいっぱい。ただ7月に社員も増え、協力者のもとみんなで会社を大きくする、成功させるとの思いに乗っからせてもらっています」

 ――会社の事業の根幹は変わらないのか。
 「基本的に引退したアスリートのマネジメントに関わる新コンテンツの開発をやっている会社です。育った選手の出口のサポートだけではなく、今の流れをもっと広げていきたい。ホークスOBを支援する中で活動領域も広げていっています」

 ――現役時代は右腕として3球団で投げた。投手と社長。つながる部分は、あるのか。
 「似ているところはあります。1人ではないところ。誰かに“江尻”と呼ばれないとマウンドには上がれない。2軍投手コーチが1軍に推薦して監督が登板起用する。右腕一本なわけじゃなく、いろんな人に支えられている。みんなで勝とう、夢を見よう。助け合ってくれているところです」

 ――社長としてプレッシャーもあるのか。
 「社長としてプロのマウンドに上がっている感じですね。三笠(杉彦)GMには“またプロ野球選手になったね”と言われました。だめならクビ。だめと判断されたらクビ。プロの投手と思ってやってます」

 ――13年間の現役生活後、38歳で営業マンに転身。球団に残る選択もあったのでは。
 「スカウト就任の誘いはありましたが、何か知らない世界に行こうと。それが正解というかラッキーでした。野球界で38歳はベテランですがビジネス界では若手。今も“若手経営者”と言われて周りの方からいろいろ教えていただけています。分かったふりをせずに吸収。成長のチャンスがゴロゴロ転がっています」

 ――営業から球団広報を経ての社長に。
 「営業では、デジタルマーケティングツールを売ってくれと。PCのソフトウエアの中身なんですけど。みんな分からなかったことなので一から学べたのもラッキーでした。球団に戻ってからは新会社設立のプロジェクトをやっていました」

 ――連日の激務の中、オフはあるのか。
 「休みはあるんですが、休みの日にテレビ出演がある。地元の仙台市で、ニュース情報番組のコメンテーターをやっています。宮城県出身者の視点、経営者の視点でスポーツだけではなく、時事ネタを20秒にまとめてしゃべったり。勉強になりますし面白いです」

 ――社長として今後のビジョン、野望は。
 「周りにサポートしてもらって感謝しかないが、個人的にはアクロバッツが日本中のスポーツの価値を高める会社になることが一つです。そして、ここで十分と思わず、日本を飛び出してムーブメントを巻き起こす。社長としてマウンドに上がっていきたいです」

 ◇江尻 慎太郎(えじり・しんたろう)1977年(昭52)4月30日生まれ、宮城県仙台市出身の46歳。仙台二から、2浪の末に早稲田大社会科学部に入学。1年時からリーグ戦に登板し01年に自由獲得枠で日本ハム入団。10年途中から横浜、12年オフにソフトバンクへ、ともにトレード移籍。14年10月に戦力外通告を受け、トライアウト受検後に現役引退。通算277試合28勝20敗1セーブ、防御率4.38。15年にソフトバンク子会社の「SB C&S(コマース&サービス)」に入社、18年の球団広報を経て19年8月の「AcroBats」の立ち上げから携わり、23年4月に代表取締役社長。趣味はゴルフでベストスコアは83。

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