【甲子園】花巻東・麟太郎 V打含む3安打 「逆襲の夏」へ8年ぶり初戦突破

[ 2023年8月9日 05:30 ]

第105回全国高校野球選手権記念大会第3日 1回戦   花巻東4-1宇部鴻城 ( 2023年8月8日    甲子園 )

<花巻東・宇部鴻城>7回、内野安打を放つ花巻東・佐々木麟(撮影・藤山 由理)
Photo By スポニチ

 1回戦4試合が行われた。歴代最多の高校通算140本塁打を誇る花巻東(岩手)の佐々木麟太郎内野手(3年)は、決勝の先制打を含む3安打1打点と躍動した。待望の一発こそ生まれなかったが、昨春選抜で無安打に終わった悔しさを晴らすべく、夏は15年以来8年ぶりとなる初戦突破に貢献。徹底した内角攻めをいずれも逆方向に打ち返した巧みなバットコントロールを、メジャー球団のスカウトも絶賛した。

 貪欲なまでに勝ちにこだわった。仲間と過ごす最後の夏。佐々木麟は試合後の取材時間13分で、実に5度も同じ言葉を口にした。「チームが勝つために」。切なる思いを、スイングに込めた。

 「勝ちにこだわってやってきたので、勝てて良かったです」
 初回の第1打席からチーム打撃に徹した。徹底した内角攻めにも強引にならない。カウント3―1からの内角直球を左前へはじき返し、甲子園での初安打をマークした。続く4回無死二塁でも内角低めスライダーを手元まで引きつけ、聖地初打点となる先制の左前打。5回の申告敬遠を挟み、7回2死一塁の第4打席でも内角高め直球を三塁強襲安打とした。大谷の日本ハム時代の応援歌が流れる中、放った3安打はいずれも逆方向。「どれだけ勝つために質の高い打撃をするかを考えていた」と胸を張った。

 チーム全員でつかんだ1勝でもあった。試合前、サイド右腕・浅田の対策として、父でもある佐々木洋監督からは「右も左も逆方向を」と指示が飛んだ。岩手大会3回戦・水沢商戦では、背中を痛めた影響から佐々木麟がスタメン落ちしていたとはいえ、同じサイド右腕に延長10回まで2得点と苦戦。一転、この日は中堅から逆方向への打撃に徹したことで浅田を5回途中で降板させ、指揮官は「指示通りにやってくれた」とうなずいた。

 高校通算140本塁打のスラッガーに対し、すでに西武と日本ハム、ヤクルトが1位候補としてリストアップ。巧みなバットコントロールで放った3安打に、ナ・リーグの日本人スカウトも熱視線を送った。「メジャーでも一流になれる」と絶賛。米時間7日現在でOPS(出塁率+長打率)・845を残すレッドソックス・吉田を引き合いに「同じぐらいの数字は残せる打者になる」と続けた。

 初めて甲子園に出場した2年春は無安打。昨夏、今春は出場すら逃した。打撃フォームは負傷前の形に戻ったが、佐々木監督は「振ることに怖さは感じていないと思うが、まだ万全ではない」と明かす。それでも、勝つためにバットを振り続ける。悔しさも込め、岩手大会で使用していた帽子に記した言葉は「逆襲」。最高の笑顔を見せるのは、頂点に立ってからと決めている。(村井 樹)

 ≪「桁違い」12球団スカウト絶賛≫ネット裏で視察した12球団のスカウトも佐々木麟を絶賛した。ロッテ・榎康弘アマスカウトディレクターが「逆方向に桁違いの打球が飛んだ。広角に本塁打が打てる証」と話せば、巨人・水野雄仁スカウト部長も「内角の厳しいコースを攻められている中での3安打。スター性があるし、楽しみな素材なのは間違いない」と高く評価した。ヤクルト・橿渕聡スカウトグループデスクも「クリーンアップを打てる素材なのは間違いない」と将来性に期待を寄せた。

続きを表示

「始球式」特集記事

「落合博満」特集記事

2023年8月9日のニュース