今年の虎なぜ強い?金本版JFKで接戦の勝率アップ

[ 2017年5月16日 05:52 ]

阪神の桑原
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 阪神が首位に立ってから10日がたった。3年ぶりに貯金10をつくるなど順調な滑り出しだ。34試合を消化した時点の昨季と今季で、チーム打率、本塁打、盗塁、総得点、総失点などの数字に大きな変化はないが、昨季の貯金2で3位と今季の首位は何が違うのか。何が超変革したのか。データをひもときながら、要因に迫った。

 糸井の加入で猛打爆発、盗塁倍増…と想像していたファンも多いはずだ。確かに白星量産には貢献しているが、データ上ではあまり変化がない。チーム打率も1厘差。総得点も1点しか変わらず、得点圏打率や本塁打数は若干減っている。ただし、投手部門の数字では、チーム防御率やセーブ数に顕著な変化が見られた。これは一体、何を物語っているのだろうか。

 今年の1月1日付紙面で、スポニチ本紙は金本監督のインタビュー記事を掲載した。過去に星野監督や岡田監督が就任2年目で優勝しており、金本監督にも目算があるのでは。だが、思惑は違った。「今はまだ計算できない。JFKがいれば計算するけど(笑)。(強いときの)中日だって浅尾がいて岩瀬がいた。昨季、うちがリリーフで何試合、落としたか」。望んでいたのは、救援を任せられる若手の台頭。その変化こそ、まさに貯金10の真実だった。

 特にセーブ数はわかりやすい。最終回に登場して、通常1イニングを抑えるクローザーは、3点差以内でないとセーブは記録されない。昨季のマテオの8に対して、今季は倍増となる16(ドリス15、高橋1)。3点差以内の接戦をいかにものにしてきたかを物語る。3点差以内の試合は、昨季の8勝10敗から17勝10敗と大幅に改善している。

 ドリスにつなぐまでの救援陣も多士済々。特に金本監督の眼力が光ったのは桑原だ。昨季は1軍登板なしだが、ここまで17試合で2勝0敗、防御率は1・08。8ホールドはマテオ(12ホールド)に次ぐチーム2番目の数字で、貢献度が分かる。昨年と疲労が段違いという桑原だが「今は自分のことで精一杯なんで。まだ、1年間やったことがないので、1日でも長くやれるように頑張りたい」と、意気に感じて投げている。リードした試合は相手に勝機を渡さない。金本版JFKが働いているわけだ。

 接戦の強さ同様に、見逃せない要素が逆転勝ちだ。昨季、6度の逆転勝ちに成功したものの、一方で7度も逆転負け。不安定さが目立ったが、その数字も裏返り、今季は8勝5敗と白星が先行している。これも、リリーフ陣が安定しているからこそ追いつき、追い越せる。特に5月5日からの広島3連戦は歴史に残る逆転劇が続いた。

 5日の第1戦は、その時点で今季最大となる4点差の逆転勝ち。だが、翌日はさらに上回った。5回表で0―9だったが、5回裏に1点、さらに6回に4点を返し、なおも2死満塁の好機をつくると、高山が走者一掃の適時三塁打。「ここで打てば勝機が見えてくるところでね。食らいつくように打ってくれた」と金本監督も称えた一打がドラマを呼び込み、球団史上、最大差となる9点差の逆転勝ち。393日ぶりの単独首位に浮上した。今季を振り返った際、必ずポイントになる一戦だった。

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2017年5月16日のニュース