大野将平「今までに感じたことのない恐怖」 毎日闘った「大野は当たり前に勝つ」の前評判

[ 2021年8月28日 23:04 ]

<東京五輪・柔道柔道男子73キロ級>金メダルの大野将平は畳から引き揚げる前にしばらく感傷に浸る(撮影・小海途 良幹)
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 柔道男子73キロ級で五輪2連覇を果たした大野将平(29=旭化成)が、28日放送のカンテレ「こやぶるSPORTS超 金メダリスト激白SP」に出演し、連覇までの苦悩の日々を振り返った。

 大野は東京五輪の準決勝、決勝でゴールデンスコアの延長戦に入った際に「今まで感じたことのない恐怖に。ただただ、怖かった」と震えたという。前回のリオデジャネイロ五輪を制覇した際は「若さもあり、勢いもあり、怖いもの知らず」と表現。「五輪も普通の国際大会と一緒だ」と本音を明かした。だが今回は「チャンピオンになった分、勝ち続けることの怖さも逆に知っている」と、連覇の難しさを肌で感じていた。

 それは、柔道男子前監督の井上康生氏も知っている怖さだ。アテネ五輪で連覇を狙った際に、井上氏はあえなく敗退。「アテネ五輪の体験談を語っていただいた。それが糧となっていきた」と大野は感謝した。日本代表に入って過ごした9年間は、井上監督就任と同じタイミング。だからこそ、連覇達成後にはお互いに泣きじゃくって抱き合い、大野は「今見ても泣きそうになる」と振り返った。そんな井上監督から、決勝の前には「胸を張って、上を向いて、真っすぐ歩け」と助言され、「集中、執念、我慢」を口ずさんで決勝の畳の上に立った。

 それでも、東京五輪までの5年間は苦闘の日々。周囲からの「延期になっても、大野はどうせ強い」「当たり前に勝ってくるだろう」との声を聞いて、「一番、自分の中で力になった」と振り返る。「この声に乗っかってしまうと、試合に出ていなくても俺は強い、なんやかんや勝つだろうと。その声をあてにした時点で、自分は負けると理解していた」と、見えない敵と闘った毎日だった。「この1年間は、自分が負ける姿ばかりを想像して、稽古ができた。一番のストレスだったが、だからこそ頑張れた」とも明かした。

 日本男子柔道で、五輪連覇を果たしたのは過去に、斉藤仁、野村忠宏、内柴正人の3人だけ。3連覇になると、野村しかいない金字塔だ。パリ五輪で3連覇がかかる大野は「終わった瞬間から、3年後、3連覇と“3”という数字が嫌いになってきた」と苦笑いで明かしたが、「“3”という数字と年内は向き合いたい」と前向きに次の五輪を視野に入れている。

 「私にとって五輪は楽しむ場ではない。やはり戦いの場なので、武道イコールそれは大げさな言い方をすれば、殺し合いの過酷な競技。どんな形であれ、修行を続けていきたい」

 武道家として、再び過酷な道を歩む決意を見せていた。

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2021年8月28日のニュース