スピースの悲劇に思う 日本ツアーにも“名物3ホール”を!

[ 2016年5月25日 09:15 ]

 もう1カ月以上もたったのに、マスターズ最終日にジョーダン・スピースを襲った悲劇はゴルフファンの記憶の中に鮮明に刻まれている。

 単独首位で迎えた12番パー3で2度もクリークに打ち込んで「7」を叩き陥落。ティーショットを“池ポチャ”した後、ドロップして打ち直した第3打はアマチュアも目を疑うほどの大ダフリだった。連覇を逃したこと以上に悲惨な光景が強い印象を残した。「やはりアーメンコーナーには魔物が潜んでいる」と感じた人は多かったはずだ。

 今さら説明の必要もないだろうが、アーメンコーナーとはオーガスタ・ナショナルGCの11、12、13番の3ホールの通称だ。11番パー4は505ヤードもあるが、12番パー3は155ヤード、13番パー5は510ヤードと距離的には長くない。ただし、どのホールにも池や小川があり、そのうえ風が強くて風向きも一定しない。スコアを伸ばす可能性がある一方で大きく崩れる危険性もある。明暗を分ける3ホールであるがゆえに、そう呼ばれている。

 アーメンコーナーという言葉を最初に使ったのはスポーツイラストレイテッド誌とされている。1958年のマスターズ最終日にケン・ベンチュリを逆転して優勝したアーノルド・パーマーの記事の中に登場する。

 米ツアーにはアーメンコーナーのように3ホールまとめた呼称を付けたコースがいくつかある。

 ホンダ・クラシックが開催されるPGAナショナルの15、16、17番は「ベアトラップ」と呼ばれる。コース改修を手掛けた「ゴールデンベア」ことジャック・ニクラウスに由来する。いずれも池が絡んだトリッキーなホール。「ニクラウスが仕掛けた罠」である。

 バルスパー選手権の会場イニスブルック・リゾートの16、17、18番は「スネークピット(蛇の巣穴)」。ツアー屈指の難易度を誇り、コース脇には蛇の銅像がある。

 毎年ウェルズ・ファーゴ選手権が行われ、来年には全米プロ選手権を開催するクウェイルホロー・クラブの16、17、18番は「グリーンマイル」。映画でも描かれたグリーンマイルとは死刑台に続く通路。緑色に塗られていることからそう呼ばれる。クウェイルホローのグリーンマイルは、ツアーで最も難しい上がり3ホールと言われる。17番パー3は池に突き出た半島のようなグリーンを攻略しなければならない。そして18番パー4はフェアウエーのすぐ左にクリークが流れる。ボールがカップに入るまで選手は生きた心地がしない。

 日本のツアーにもそんな名物3ホールがあればどうだろう。3つの難関を選手は重圧を感じながら通過し、ギャラリーはわくわくしながら見守る。ネーミング次第でトーナメントの魅力が格段に増すに違いない。(福永 稔彦)

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2016年5月25日のニュース