五輪男子3枠獲得!高谷 右膝負傷押して出場「本当に苦しかった」

[ 2016年3月19日 05:30 ]

男子フリー74キロ級準決勝で勝利し、感極まり座り込む高谷惣亮

レスリング・リオデジャネイロ五輪アジア予選第1日

(3月18日 カザフスタン・アスタナ)
 出場枠ゼロの崖っ縁から、まずは3階級で切符を確保した。男子フリースタイルで57キロ級の樋口黎(20=日体大)が優勝、同74キロ級の高谷惣亮(26=ALSOK)とグレコローマンスタイル59キロ級の太田忍(22=日体大)も決勝へ進み、上位2人に与えられる出場枠を獲得して五輪代表に決まった。グレコ85キロ級の岡太一(27=自衛隊)は準決勝で敗れ、今回の予選での出場枠獲得はならなかった。

 準決勝を制した高谷は天を仰ぎ、勝利をかみしめた。右膝を負傷しながら執念でリオデジャネイロ五輪への切符をつかみ取り「本当に苦しかった。自分との戦いだった」と感涙にむせんだ。

 昨年の世界選手権では、男子はフリー、グレコともに上位6人に与えられる五輪枠を一つも確保できなかった。五輪予選を兼ねるようになった91年大会以降では初めての非常事態。日本レスリング協会の福田富昭会長は「非常に申し訳ない。たくさんの期待、支援を裏切る結果だった」と代表団を出迎えた成田空港に丸刈りで現れ、誰もが男子代表に対する強い危機感を隠さなかった。

 同大会で2回戦敗退の高谷も、背水の陣で迎えた。先月26日の練習中に右膝内側側副じん帯に全治3週間のケガを負った。今回の予選で悪化させて敗退するようなことがあれば、4月と5月の世界予選にも支障が出かねない。出場辞退も頭をよぎったが「人間なかなか万全にはならない。今回に僕の全部を懸ける」と出場を決断した。

 初戦は慎重な戦いぶりだったが「アドレナリンが出て痛みを感じなくなった」という準々決勝でテクニカルフォール勝ち。五輪出場枠を懸けた準決勝は仁川アジア大会王者のクルバノフと対戦し、第1ピリオドは得意のタックルを決めるなど4―0とリード。後半は劣勢で2度の警告を受けたが、4―2で何とか逃げ切った。「ちょっとのケガじゃひるまない」。京都・網野高1年の時にも全国大会の3日前に左足首のじん帯を痛め、痛み止めの注射とテーピングで優勝したことがあった。「全治3週間ってことはちょうど試合当日に完治するってことなんですよ」とポジティブに切り替えられたのは過去の経験も生きていた。

 4年前のロンドン五輪もこのアジア予選で出場権を獲得し、チームに勢いをつけた。14年世界選手権銀メダルに輝いた日本男子のエース。「五輪に出るためにやっているわけじゃない。金メダルを獲るためにやっている」。ケガを抱えているためカザフスタン選手との決勝は途中棄権したが、きっちり役割を果たして五輪でのメダル獲得へ一歩を踏み出した。

 ◆高谷 惣亮(たかたに・そうすけ)12年ロンドン五輪出場。14年世界選手権2位。全日本選手権は11~15年に5連覇、全日本選抜選手権は13~15年に3連覇した。京都・網野高、拓大出、ALSOK。1メートル77。26歳。京都府出身。

 ▽レスリング男子のリオ五輪への道 出場枠の獲得機会は4度ある。(1)昨年9月の世界選手権で各階級上位6人(2)今回のアジア予選では上位2人(3)世界予選第1戦(4月22日開幕、モンゴル・ウランバートル)は上位3人(4)同第2戦(5月6日開幕、トルコ・イスタンブール)は上位2人。日本代表選考は、昨年の全日本選手権優勝者と同2位の選手に限られる。優勝者がアジア予選以降の3大会のうち2大会に出場し、枠獲得で代表に決定。残る1大会は2位が出場し、枠を獲得した場合は優勝者とのプレーオフで代表を決める。

続きを表示

この記事のフォト

2016年3月19日のニュース