川内 悔し涙「銅」来夏世界選手権断念も…リオでの反撃誓う

[ 2014年10月4日 05:30 ]

<男子マラソン>3位でフィニッシュする川内

仁川アジア大会第15日

(10月3日)
 公務員ランナーが泣いた。男子マラソンで、川内優輝(27=埼玉県庁)は2時間12分42秒の銅メダル。2時間12分38秒で優勝したハサン・マフブーブ(32=バーレーン)、2時間12分39秒で銀メダルの松村康平(27=三菱重工長崎)とのトラック勝負で力尽きた。金メダルで決まった来夏の世界選手権(中国・北京)の代表を逃した川内は今後の同選手権選考会には出場しない。レース後、学習院大時代以来となる悔し涙を流し、16年リオデジャネイロ五輪での反撃を誓った。

 悔しくて涙を流したのは、いつ以来だろう。あれは、駅伝の強豪とは言えない学習院大時代。箱根駅伝の予選会で泣き、本戦で区間3位だった時も泣いた。金メダルだけを目指したアジアの舞台は、トラック勝負に敗れて銅メダル。「悔しい。金も銀も見えて負けるのは…。これで悔しくなかったらアスリートをやめた方がいい」。川内の涙腺は決壊し、目は真っ赤だった。

 25キロ、28キロと歯を食いしばり、目を見開いてペースを上げた。集団を5人に絞り込んだが、30キロすぎの給水でアクシデント。マフブーブが伸ばした腕に接触して集団から遅れた。「邪魔されたバーレーンに負けてたまるかっ!途中から金も銀も銅もなくて、あのバーレーンに勝ちたいと思った」。最大6秒差も、33キロで集団に復活。その後も粘ってトラック決戦に持ち込んだが、ラスト200メートルで力尽きた。

 誰よりも日の丸の重みを感じている。「代表は責任も多いし、苦情も来る」。職場に「国に傷を付ける走りをするな」「アジアで活躍できないから辞退しろ」など、過激な手紙が届いたことは1度や2度ではない。「匿名で殴り書きなんですよ」。失敗できない重圧を背負い、毎週のようにレースに出た。凡タイムに終わった代表候補を、「その辺の市民ランナーにも負ける!」とぶった切ったことも。日本を背負う強い気持ちが、悔し涙につながった。

 金メダルを逃したことで、レース前から語っていた通り、来夏の世界選手権は断念する。見据えるのは16年リオデジャネイロ五輪。11月のニューヨークシティーマラソンからリスタートする。「もう一度こういう舞台に戻れるかどうか。戻れなければ、それだけの人間。五輪予選の(15年)福岡で、2時間6分30秒をバシッと切って決められたら一番いい」。自ら仕掛け、遅れ、追いつき、トラックで散る。こんなランナーは他にいない。予測不可能な“川内劇場”。次は2年後、地球の裏側で開演してみせる。

 ▽リオデジャネイロ五輪の男子マラソン代表選考 枠は3。来夏の世界選手権で日本人最上位入賞の選手は代表に内定する。国内選考会は15年福岡国際、16年東京、同年びわ湖毎日の3レースで、日本人3位以内の選手が選考対象に。日本陸連設定記録の2時間6分30秒をクリアした選手が、日本人3位以内に入れば代表に。枠が埋まらなければ、選考会の結果、ナショナルチームの合宿内容、医科学データなどを総合的に判断して選出する。

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