チェコ出身最軽量98キロ 隆の山“勇み足”で初白星

[ 2011年9月17日 06:00 ]

翔天狼(左)の勇み足で勝利した隆の山(右)

大相撲秋場所6日目

(9月16日 東京・両国国技館)
 チェコ出身の新入幕力士・隆の山が、翔天狼の勇み足で初白星を挙げた。初日から5連敗と幕内の壁は高かったが、土俵際で脅威の粘り腰を発揮し、逆転勝利を呼び込んだ。20度目の優勝を狙う白鵬は豪風を押し出して6連勝。大関獲りの琴奨菊、稀勢の里とともに無敗をキープしている。鶴竜は隠岐の海に寄り倒され、大関獲りへ痛恨の3敗目を喫した。
【取組結果】

 諦めない気持ちがミラクル逆転劇を生んだ。関取最軽量の98キロの隆の山は、自分より50キロ以上も重い翔天狼に押し込まれ土俵際まで後退。だが、両足を俵に乗せ右から捨て身のすくい投げ。すると翔天狼の右足が俵の外に踏み出し、物言いの末に相手の勇み足で新入幕初白星が決定した。

 100キロ未満の力士の幕内勝利は97年九州場所千秋楽の舞の海(99キロ)以来、5045日ぶり。「うれしかった。本当にうれしかった」。チェコ出身力士初の幕内勝利。花道では涙を浮かべた。 チェコの首都プラハ出身。母ヤナさんの勧めで7歳で柔道を始めた。17歳のときに母国の相撲協会が、世界ジュニア選手権(両国)に選手を派遣しようとした際、メンバーが足りず駆り出され、未経験ながら軽量級で3位に。それまで国立のスポーツ学校に通っていたが、女手一つで育ててくれたヤナさんに親孝行するため、協会会長の紹介で10年前に入門した。

 軽量のハンデもあり、長年幕下上位の壁を突き破れずにいたが、八百長問題で関取が大量処分され、先場所十両に昇進。10勝を挙げ、1場所で幕内に昇進した。

 所属の鳴戸部屋では率先して掃除を行うまじめな性格。鳴戸親方(元横綱・隆の里)の師匠だった元二子山親方(元横綱・初代若乃花)の「稽古場のゴミを拾えないやつは出世しない」との言葉を受け継ぎ、本人も「掃除は大事」とサラリと言ってのける。「時代劇が大好き」と日本文化にも溶け込み、彫りの深いマスクと細身の体でファンも急増中だ。

 過去、初日から5連敗した新入幕力士は全て負け越し。「あしたも頑張ります」。勝ち越しへの道は険しいが、人気低迷中の相撲界の希望の星にかかる期待は大きい。

 ◆隆の山俊太郎(たかのやま・しゅんたろう、本名=パベル・ボヤル)1983年2月21日、チェコ・プラハ生まれの28歳。01年九州場所で初土俵。「関取になるまでは」と今年7月の名古屋場所後まで母国に帰らなかった努力家。日本語も日常生活には困らない。得意技左四つ、投げ、内掛け、外掛け。1メートル85。

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