【素顔の代表　本田圭佑】名古屋入団直後にぶつかった壁

[ 2014年4月9日 11:00 ]

　高校時代は飛び抜けた存在でなかったＭＦ本田圭佑（２７＝ＡＣミラン）が、なぜザックジャパンのエースになり得たのか――。元Ｊ１名古屋のスカウトで、現在はスポーツ事業を手がけるＰＹＲＡＭＩＤに所属する金益祚（キム・イッチョ）氏（５６）と、石川・星稜高で３年間をともに過ごしたＭＦ橋本晃司（２７＝Ｊ１大宮）の証言を基に、進化の秘密に迫る。

　セリエＡでも見劣りしない本田の屈強なフィジカル。しかし、それは決して持って生まれたものではなかった。「２人ともヒョロかった。当時の本田も細かった。“ウェズレイの筋肉、半端ねえな”って２人で話したのを覚えている」。高校当時を振り返るのは星稜の同級生・橋本だ。

　本田が“プロの壁”にぶつかったのは、高校２年の０４年２月、名古屋のスカウトに誘われ鹿児島県指宿市で行われたキャンプに参加した時だった。チームは前年得点王のＦＷウェズレイやＧＫ楢崎正剛に加え、元日本代表ＤＦ秋田豊、のちの日本代表守護神・ＧＫ川島永嗣（現Ｓリエージュ）らが加入。そうそうたるメンバーが集まっていた。そんな中、初めて練習に参加。春先にも橋本とともに豊田市内での練習に加わったが、圧倒的な体格差によって練習で何度もはじき飛ばされた。

　当時、スカウトを務めた金益祚氏は率直に第一印象を語る。「コレというのはなかったなあ」。同学年にはＦＷ岡崎（現マインツ）やＤＦ長友（現インテル・ミラノ）らもいたが、関係者内の評価は清水ユース所属のＭＦ枝村（現名古屋）が最も高く、本田はそれほどでもなかったという。それでも、金氏はミニゲームなどで秋田やウェズレイとボールを競り合ったり、抜いてやろうと果敢に立ち向かっていくその姿に、他の高校生とは違った資質を感じ取った。「高卒で入ってきたら２、３年はコツコツとやる子が多い中、圭佑には１年目からプロの試合に出てやろうという凄みがあった」。何が足りないかを試すように挑戦する姿を見て将来が楽しみに思えた。

　金氏の予想通り、名古屋への練習参加は大きな転機となる。「今までも（筋トレを）やっていたとは思っていたけど、特にやっているなと思ったのはその頃」と橋本。星稜の練習グラウンド横にはトレーニングルームが併設されている。年度が替わって最高学年になると、約２時間の練習後、毎日のようにトレーニングルームへ通った。１日３０分から１時間。それまでは技術を磨くことにばかり専念していたが、プロとの体格差を知ったことで、トレーニングにも時間を割き、胸板や両腕、下半身は２年時までとは見違えるような体つきに変貌した。

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