【素顔の代表　本田圭佑】運動量懸念…獲得見送ったクラブも

高校時代から高い意識を持って練習に取り組み、プロで活躍する夢を追い続けた本田

　高校時代は飛び抜けた存在でなかったＭＦ本田圭佑（２７＝ＡＣミラン）が、なぜザックジャパンのエースになり得たのか――。元Ｊ１名古屋のスカウトで、現在はスポーツ事業を手がけるＰＹＲＡＭＩＤに所属する金益祚（キム・イッチョ）氏（５６）と、石川・星稜高で３年間をともに過ごしたＭＦ橋本晃司（２７＝Ｊ１大宮）の証言を基に、進化の秘密に迫る。

　金氏は「本田は逆境に強いとかじゃなくて、とにかく絶対に腐らない。純粋にサッカーと向き合える性格が、アイツを成長させた」という。弱点は克服すればいい。むしろ自分のレベルアップの好機と考えている。試合で当たり負けして次の試合で先発を外された時には金氏を誘って焼き肉店へ直行した。理由は明白。「もっと体をつくらなアカン」。起用されなかったことを嘆くより課題を分析し、ひたすら肉を食べ続けた。その後も金氏と何度も焼き肉店に足を運んだという。

　プロ２年目には当時のＧＫコーチをつかまえて「どうすればボールが落ちるフリーキックが蹴れるのか」と真剣に助言を求めた。あえて受ける側の視点を聞いてキックに生かした。アドバイスを基に自宅近くの公園で一心不乱に無回転ＦＫの練習をする姿は近所では有名だった。今の代名詞でもある「無回転ＦＫ」の原点だった。

　高校時代の本田は、良い選手の一人でしかなかった。それが、飛び抜けた存在になれたのは「努力し続けられる才能」があったからだ。卒業時には横浜も獲得に興味を示したが、当時の岡田武史監督が運動量の少なさを懸念し、見送った経緯がある。しかし、本田はその頃既に陸上部の同級生に走り方を聞き、持久力を高めるトレーニングに取り組んでいた。

　ＡＣミラン移籍後、結果が出ない日々が続いた時、それでも、自身のブログでは「今まで以上に大変な仕事になるかもしれませんが期待してもらって結構です」とつづった。その姿勢は１０年前と何も変わらなかった。待望のリーグ戦初ゴール。本田はまた進化した。