藤井王将の妥協なき対局姿勢 奇襲読み切り圧勝も…完璧な勝ち方追求 谷川17世名人が第6局総括

[ 2023年3月14日 05:10 ]

最年少王将防衛から一夜明け、笑顔で会見に臨む藤井王将(撮影・河野 光希)
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 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠、羽生善治九段(52)による7番勝負は4勝2敗で藤井が初防衛に成功した。王将4期の谷川浩司17世名人(60)が第6局を解説するとともに、両者の今後を展望した。

  第6局は角換わり早繰り銀に進んだ。後手藤井の40手目△6四角まで、昨年11月の叡王戦段位別予選と同じ進行だった。
 永瀬拓矢王座(30)―羽生。「羽生九段は、永瀬王座の早い動きに対応できずに敗れました」。つまり羽生は、自らが敗れた対局を勝った先手側で採用した。それに藤井が見事に対応した。

 前例を離れた直後の42手目△7三桂(第2図)は6五の銀取りを受け、自然な右桂の活用だが、▲7五歩で逆に桂頭を狙われる。「感覚的には嫌だし危ない。しかも(2二が)壁銀。それでも藤井王将は読み切っていました」。わずか3分での着手が証だろう。「さすがと思ったのは、結果に満足せず終局後、より完璧な勝ち方を求めるコメントをしていた」と、妥協なき対局姿勢を称えた。

 羽生が挑んだ通算100期は持ち越しになった。ただ、2勝4敗の結果は「十分接戦と言えます」。その内容も、金字塔への期待を強くさせた。

 「(昨年の)竜王戦の広瀬章人八段、そして羽生九段。最先端でなくても前例の少ない形なら、指し方次第で勝負できるのではないかと他の棋士も感じたと思う」

 藤井対策はここ5年以上、全棋士の共通課題。第1局から一手損角換わり、相掛かり、雁木(がんぎ)、角換わり腰掛け銀、横歩取り、角換わり早繰り銀。オールラウンダーの羽生だからこそ、6局全て違う戦型で戦えたのはもちろんだが、その指針を示した、価値ある7番勝負になった。

 そして藤井は19日に2勝1敗で6冠へ王手をかける渡辺明棋王(38)=名人との2冠=との棋王戦第4局に臨む。渡辺とは4月開幕の名人戦でも激突することから、その行方が注目される。

 「連敗から第3局の大熱戦を制したことで、渡辺棋王の心境も変わるでしょう。(将棋は)気持ちでひるんだ時点で形勢も損ねている。第4局以降も、踏み込んだ戦い方ができるかどうかです」。名人戦も占う大一番へ、熱視線を送った。 (構成・筒崎 嘉一)

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