【女優主演賞】岸井ゆきの スタッフの思いを背負い…「全てを見せられた」 体づくりと並行し手話の練習も

[ 2023年1月19日 05:00 ]

2022年(第77回)毎日映画コンクール各賞決定 ( 2023年1月18日 )

笑顔でポーズを決める岸井ゆきの(撮影・会津 智海)
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 岸井ゆきのは「ケイコ 目を澄ませて」を、「今までの夢が全部詰まっている作品」と評する。全員が一丸となって作り上げた自負があるからこそ、女優主演賞はもちろん、監督やスタッフとの同時受賞に「皆で獲れたら幸せだねと話していたので、とてもうれしいです」と喜びをかみしめた。

 原案となった「負けないで!」の著者で、聴覚障がいがありながらプロボクサーとしてリングに上がった小笠原恵子さんを体現するため、クランクインの3カ月前からボクシングのトレーニングを開始。技術的なことに加え、糖質制限をしながら筋肉をつけるボクサーとしての体づくりも求められた。「最初は見ていられないくらい下手くそでしたね。でも、小学生の頃から器械体操をやっていてどこの筋肉に何が必要かはだいたい分かっていたので役立ちました。増量はとにかく食べて5キロ以上は増え、パンチがどんどん重くなっていく感覚がありました」

 並行して手話の練習もあり、さらに主要スタッフによるロケハンにも参加。ロードワークを行う荒川の河川敷などを歩くことで思いを共有し、ケイコ像を体内に落とし込んだ。「身を任せるのではなく、自分の中で生み出されたという感覚が強かった。スタッフの皆さんがこの作品に懸ける思いも目に見えて分かり、私はその思いを背負って全てを見せられたらいいなと思いました」

 撮影中もケイコとして存在することだけに集中。特に試合のシーンでは感覚を研ぎ澄ませ、相手が動くリング上の“響き”を感じるほど鋭敏になっていたという。そして、完成した作品を小笠原さんと一緒に観賞し、涙を流し合った。「二度とない瞬間を閉じ込めてくれたと思いました。何より、小笠原さんが喜んでくださったことがうれしかった」

 ただ一つ、かなえられなかった夢がある。釜山で初の海外の映画祭を体験したが、ベルリンにはコロナ禍で行けなかったことだ。「人生でこんなに泣いたことがないくらい泣きました。だって、三大映画祭ですよ。作品が行けるだけで十分なんですけれど、そこに私個人の夢がくっついてしまったので本当に悔しかった」

 昨年は出演映画が5本公開される大活躍。後悔はあるだろうが、心から映画を愛しているだけに次のチャンスは意外と早く訪れるかもしれない。

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