備忘録8

[ 2020年8月18日 08:00 ]

サプライズで贈られたバースデーケーキを手にする藤井聡太棋聖
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 【我満晴朗 こう見えても新人類】

 ☆7月18日 対菅井竜也八段(日本シリーズJTプロ公式戦=東京・シャトーアメーバ)

 103手で先手・藤井の勝ち。同棋戦(通称JT杯)は昨年に続き2度目の出場で、この日が初勝利となった。

 JT杯と言えば対局者の和装が義務付けられているユニークな棋戦。超早指し戦なのに、途中休憩時間を挟む関係で封じ手も実施される。

 つまり「疑似タイトル戦」。

 藤井は昨年(19年)の1回戦(対三浦弘行九段)で両方とも経験しているので、6月28日の棋聖戦(和服)7月13日の王位戦(封じ手)はいずれも自身2度目の体験。それでも各日の一般ニュースでは「タイトル戦初」の「タイトル戦」が省略されて報じられた。JT杯の存在が無視されたようで、担当記者としては複雑な心境になる。

 ご存じの通り王位戦第2局で藤井がしたためた「タイトル戦初」の封じ手は通常2通のところ3通となった。これは木村一基王位の発案。追加分は希望者に販売し、売り上げをチャリティーとすることが決まっている。販売方式は8月半ば時点で確定していないものの、オークション方式を採用すればかなりの高価がつくこと必至だ。

 では、昨年のJT杯で藤井が書き込んだ「正真正銘の初封じ手」はどうなったのだろう?

 この日の対局前、事務局に確認したところ、ファンサービスの一環で藤井分に限らず希望者にプレゼントされたとのこと。手にした方は相当幸運だ。将棋史にさん然と輝く「お宝」として永久保存してほしい。

 肝心の対局は藤井の快勝と言っていいだろう。相手の菅井はれっきとしたA級棋士。17年8月に初対戦した際は81手の短手数で屈し、続く2度目の対決も敗れて歯が立たない印象があった。しかし3度目(19年5月31日の竜王戦)で初白星を挙げて以降、この日で5連勝。一筋縄ではいかない強豪相手にこの結果は恐るべき進化を物語る。

 対局後はサプライズで18回目の誕生日(7月19日)を祝うケーキをプレゼントされた。このケーキ、なにしろデコレーションがすごい。将棋盤をかたどったスクエア型のベース部に駒がアールデコのように飾られていた。「桂」「香」がなぜか「と」と同じ赤文字だったのが気になる。もちろん特注品で、事務局によると制作費用は「数万円」。

 後日、どの駒を食べたのか聞いてみたら「王将はいただきました!」とニコニコしながら答えてくれた。よく考えれば当然かもしれない。将棋は「王将」を獲るゲームだからね。(専門委員)

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