「エール」志村けんさん“秘話”演出に一切の笑いを入れないワケ 小山田先生は裕一の成長を促す“障害”

[ 2020年6月3日 08:15 ]

連続テレビ小説「エール」第48話。小山田耕三を演じ、圧倒的な存在感を放つ志村けんさん。この日は双浦環役の柴咲コウと初絡みとなった(C)NHK
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 NHK連続テレビ小説「エール」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)にレギュラー出演しているコメディアンの志村けんさん(享年70)は朝ドラはもちろん、最初で最後のドラマ出演。俳優として圧倒的な存在感を発揮し、視聴者を魅了している。志村さんをドラマの世界に引き込んだのは、第6弾まで制作・放送されたNHKのコント番組「となりのシムラ」や「志村けん in 探偵佐平 60歳」でタッグを組んだ「エール」のチーフ演出・吉田照幸監督(50)。吉田監督が志村さんについて初コメント。「いつかドラマに出てほしいと思っていました。ようやく念願が叶いました。これまでドラマ出演を断ってきた志村さんから『監督なら』と言われたことを今でも思い出します」などと“秘話”を明かした。

 俳優の窪田正孝(31)が主演を務める朝ドラ通算102作目。男性主演は2014年後期「マッサン」の玉山鉄二(40)以来、約6年ぶりとなる。モデルは全国高等学校野球選手権大会の歌「栄冠は君に輝く」などで知られ、昭和の音楽史を代表する作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ)氏(1909~1989)と、妻で歌手としても活躍した金子(きんこ)氏。昭和という激動の時代を舞台に、人々の心に寄り添う曲の数々を生み出した作曲家・古山裕一(窪田)と妻・関内音(二階堂ふみ)の夫婦愛を描く。

 志村さんが演じるのは、主人公に大きな影響を与える日本作曲界の重鎮・小山田耕三。3日に放送された第48話で、第40話(5月22日)以来8話ぶり(12日ぶり)8回目の登場(回想は除く)。世界的なオペラ歌手・双浦環役の柴咲コウ(38)との初共演シーンが放送された。

 コント番組「サラリーマンNEO」や朝ドラ「あまちゃん」などを手掛けた吉田監督は「『となりのシムラ』をやっていて、いつかドラマに出てほしいと思っていました。ようやく念願が叶いました。志村さんの芝居の凄みをダイレクトにお伝えできるうれしさでいっぱいでした」と喜びの心境を告白。

 「これまでドラマ出演を断ってきた志村さんから『監督なら』と言われたことを今でも思い出します。その席で、志村さんに『笑いで行くか、芝居で行くか』とお尋ねしました。せっかく出るなら、今までと違う方がいいと言われました。小山田耕三に関しては、一切の笑いを入れず、演出的にもよりドラマ的な映像にしています」と演出のこだわりも明かした。

 5月1日にNHKから発表された生前撮影時のコメントでも、志村さんは「僕の出ているシーンは、困ったことにあまり笑いがないんですよ。俺、譜面も読めないのに、役柄はみんなが憧れる作曲家で、ちょっと意地悪っぽいところもある。いつもの志村けんらしくない、こんなこともやりますよってところを見てもらえれば、うれしいね」と新境地開拓への思いを語っていた。

 裕一をコロンブスレコードに推薦したものの、渾身の作品に「で?」と目もくれないなど“塩対応”を続ける小山田。この日の第48話、小山田は環から「その目。私、その目を見たことがあります。ドイツにいた頃、先生と同じ目をした芸術家たちをたくさん見ました。彼らは皆、自分の立場を脅かす新しい才能に敏感です」と指摘された。

 小山田について、吉田監督は「『エール』のテーマは、文字通り『エール』ですが、小山田のエールは裕一の成長を促す障害であり、実際は彼の才能を一番理解していた人物として捉えていました」と解釈。今後、小山田と裕一の関係がどのように描かれるのか、さらに注目される。

 志村さんは第8週(5月18~22日)に週最多の3回登場(第37話、第38話、第40話)。第8週の平均世帯視聴率は21・8%(月~金曜、ビデオリサーチ調べのデータを基に算出、関東地区)と番組最高をマーク。好調な数字の背景には、短い出番ながら圧倒的な存在感を放ち続ける“志村さん効果”もありそうだ。

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2020年6月3日のニュース