【柳沢慎吾のひとり甲子園“再現動画”】宇部商 ナインと「一心」 裸足の「Get Wild」

[ 2018年8月2日 09:00 ]

サヨナラボークを宣告されて呆然とする宇部商・藤田を再現する柳沢慎吾
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 グラウンドで戦うナインと応援団は一心同体。勝つと喜びを爆発させ、負けた時には一緒に悔し涙を流す。

 「一心」を校訓にしている宇部商(山口県)は「ミラクル宇部商」と言われるように、甲子園で印象に残る劇的な試合を繰り広げてきた。アルプス席の応援も印象的で、思い出すと胸が熱くなる。

 今から10年以上前。チアリーダーが裸足(はだし)だった。男女の応援団員たちが灼熱(しゃくねつ)の太陽に焼かれたスタンドに裸足で立ち、ハチマキを巻き、声をからし、腕を振り回し続けていた。選手と気持ちを一つにするためにね。(※文末の動画<1>参照)

 炎天下の甲子園。アルプス席のコンクリートの階段はフライパンのような熱さ。彼女たちはそんな足元に2リットルのペットボトルの水をブシャーってまいて、裸足で立ってたんだよね。Tシャツには「一心」と書かれていて。椅子の上に裸足で立って応援する時もあったみたいだけど、あれから十余年。今のニッポンは異常な猛暑。甲子園でどんな応援をするのか、いつかまた見たいね。

 応援曲では「Get Wild」。演奏し始めると点が入るなんて言われていて、一部では“魔曲”と言われていた。05年夏は静清工(現静清高)、酒田南、日大三の3校が連続してこの曲にのみ込まれた。

 悲劇の試合も忘れられない。サヨナラボーク。夏の甲子園99回の歴史で、たった一度しかない幕切れ。98年の2回戦、相手は豊田大谷(愛知)。延長15回裏、無死満塁。絶体絶命。投げているのは2年生左腕、藤田修平投手。体が細くてね。炎天下で211球目を投げようとした時、投球動作をやり直した。そこで、審判はボークを宣告。あまりに残酷な結末だった。(※文末の動画<2>参照)

 豊田大谷が校歌を歌ってる時、泣きじゃくる藤田くんを見て一緒にボクも泣いたよ。「精いっぱいやったよ。そんなに泣かなくていいじゃない」って。

 当時の審判もずっと胸にひっかかってたらしい。「厳重注意で良かったんじゃないか」とね。でも15年後に高校野球のイベントで再会した時に藤田くんから「ありがとうございました」と言われたんだって。よかったよね。真面目でいい子に成長していて。

 応援歌では、出雲(島根県)に「どじょうすくい」で知られる民謡をアレンジした「リメンバー・オブ・安来節」っていうユニークな曲があったね。お隣の鳥取県の米子東にも「どぜうすくい三・三・七拍子」という独特の応援歌があって。主に守備中の応援歌として甲子園名物だった。懐かしいね。

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2018年8月2日のニュース