世界で一番強いのは誰なのか!?

[ 2017年8月7日 10:30 ]

ダニエル・コーミエにKO勝ちしたジョン・ジョーンズ (AP)
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 【牧元一の孤人焦点】総合格闘技ファンにとって、つまり私にとって、充実した1日になった。7月30日はフジテレビで「RIZIN」が放送された上にインターネットで米国の「UFC」が配信され、長時間にわたって激闘を楽しむことができた。

 RIZINはタレント・野沢直子の長女の真珠・野沢オークライヤーのデビュー戦や高校生キックボクサー・那須川天心の特別ルール戦が面白かった。

 そして、UFCは何と言ってもライトヘビー級王者のダニエル・コーミエと同級1位で前王者のジョン・ジョーンズの一戦である。

 ジョーンズは過去にこの王座を8回防衛し、階級を超えて「最強」の呼び声も高かったが、一昨年4月の自動車事故を発端に王座を剥奪されていた。

 真の王者はジョーンズなのかコーミエなのか。ジョーンズは王者時代にコーミエの挑戦を退けているが、しばらく第一線から遠ざかっていた不利がある。私は、ほぼ互角の展開が続いて長期戦になり、最後は判定になるのではないかと予想していた。

 試合が大きく動いたのは第3ラウンドだった。ジョーンズは左ハイキック1発でコーミエをぐらつかせると、追い掛けて飛び膝蹴りを放った。たまらずにダウンするコーミエ。上になったジョーンズが容赦なくパンチを打ち込むと、レフェリーが試合を止めた。文句のつけようがないKO決着で、事前の予想は良い意味で裏切られた。

 しかし、本当に心を動かされたのはここからだ。勝利者インタビュー用のマイクを握ったジョーンズは、関係者らへの感謝の言葉を述べるだけにとどまらず、ムービーカメラに向けて力強く言い放った。「ブロック・レスナー!軽量のオレに蹴られるのが怖くなければオクタゴン(UFC)に戻って来い!!」。元UFCヘビー級王者で現在はプロレス団体「WWE」のヘビー級王者のレスナーに対する挑戦表明だった。

 しびれた。まさかレスナーの名前を出すなんて思いもしなかった。コーミエを破った今、確かに、ライトヘビー級にライバルになりそうな選手はいない。ならば、一階級上のヘビー級だ。王者はスティーペ・ミオシッチ。普通ならば彼を指名するところだ。強いことは強い。だが、かつて格闘技界をわかせたヒョードルやノゲイラに比べれば華がない。いずれにしても、ヘビー級王者とのUFC最終決戦はラストでいい。そこで、プロレスラーとして世界的に有名で華やかなレスナーとなる。元UFC王者なのだから実力的にも文句はない。ジョーンズの素晴らしいセンスに触れた気がした。

 レスナーには、WWEとの契約の問題があるし、階級が下の選手と戦って負けるかもしれないというリスクもある。対戦実現は相当に難しいに違いない。しかし、プロの格闘家ならば、あの場では、やはり、あのような発言をするべきなのだと思う。

 世界で一番強いのは誰なのか?ファンは、いや、私は、それを知りたいがために総合格闘技を見続けている。ライトヘビー級ながら「最強」と言われるジョーンズが、ヘビー級の選手に立ち向かっていくストーリーこそ、私が今求めているものだ。

 そして、いつの日にか、RIZINが、世界で一番強いのは誰なのか?の答えを見つける場となることを願う。かつて、ヒョードルやノゲイラ、桜庭や藤田が活躍した「PRIDE」は間違いなくその場だったのだから。 (専門委員)

 ◆牧 元一(まき・もとかず)編集局文化社会部。放送担当、AKB担当。プロレスと格闘技のファンで、アントニオ猪木信者。ビートルズで音楽に目覚め、オフコースでアコースティックギターにはまった。太宰治、村上春樹からの影響が強い。

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