森友問題で揺れる「私人」昭恵夫人の「秘書」

[ 2017年3月28日 08:30 ]

今月8日、「HAPPY WOMAN FESTA2017」のオープニングセレモニーに登場し、笑顔を見せる安倍昭恵さん
Photo By スポニチ

 【小池聡の今日も手探り】3月23日に衆参両院の予算委員会で行われた「籠池喚問」。格安で売却された国有地に関して、新たな爆弾が投下された。しかも、ファクスという物証付き。一連の問題をめぐり、これまで以上に関心を集めることになったのが安倍晋三首相の昭恵夫人だ。

 学校法人「森友学園」(大阪市)の理事長退任の意向を表明している籠池泰典氏は、2015年5月に10年間の定期借地契約を結んだ国有地に関して同10月、「もっと長い期間に変更できないかとの思いから、昭恵夫人に助けていただこうと携帯に電話した。留守電にメッセージを残した」と証言。翌11月に昭恵夫人付の政府職員の女性から届いたファクスには「財務省本省に問い合わせ、回答を得ました」「引き続き、当方としても見守ってまいりたい」「本件は昭恵夫人にもすでに報告」などと記されていた。職員は経済産業省からの派遣。公表されたファクスのコピーを見ると、送信者として実名とともに書かれた肩書は「内閣総理大臣夫人付」。籠池氏が職員に宛てた封書の宛名も同様だ。

 昭恵夫人は喚問終了の約4時間後、籠池氏が昭恵夫人を通じて安倍首相からの寄付金100万円を受け取ったと主張している点も含めてフェイスブックで反論。この中で、職員について「秘書」と表現した。

 喚問一夜明けの3月24日に開かれた参院予算委員会集中審議。野党がこれまで繰り返しただしてきた「首相夫人は私人か公人か」があらためて議論された。政府答弁は当然のごとく「私人」。野党議員の質問主意書に対して3月14日に閣議決定した答弁書で「公人ではなく私人であると認識している」としており、安倍首相も「妻は私人」と言い切ってきた。

 3月24日に北九州市で行われた講演で「私は普通の主婦」「普通の女性」と話したという昭恵夫人。「普通の主婦」「普通の女性」に中央省庁に勤務する国家公務員が「秘書」として付くことなどあるのだろうか。その人柄はよく「奔放」と評されるが、安倍官邸への追及が続く“森友国会”での論戦を踏まえれば、「公人」色を強めることになる「秘書」との表現は、不用意であり無防備であり無配慮だ。

 高い内閣支持率を支えてきた要因の一つが「アベノミクス」。支持には閉塞感にあえぐ国民の期待も込められていた。それがいまや、昭恵氏と籠池氏側との密接な関係をめぐり、永田町では「アベノリスク」とさえ言われている。

 内容次第では偽証罪に問われかねない喚問の場で証言した籠池氏。対して、記者会見もしない昭恵夫人。フェイスブックでの反論は「私人」ゆえのものなのだろうか。

 「夫人はもはや震源地。官邸がいくら火消しに躍起になっても、フェイスブックで反論したり、講演に出て行って涙ぐんだり、自ら火を付けてしまっている状況だ」。与党関係者のボヤキが止まらない。「ぶら下がり会見でもいいから、森友問題について話さない限り終わらない。各社の次の世論調査はどのような数字になるのだろうか」。3月25、26日に共同通信が実施したものでは、内閣支持率は前回(同11、12日)に比べ3・3ポイント減の52・4%。「これだけ見ると、国民はまだ安倍さんに優しいようだね」(同関係者)。疑惑の真相同様、政局の先行きもますます不透明になってきた。(編集委員)

 ◆小池 聡(こいけ・さとる)1965年、東京都生まれ。89年、スポニチ入社。文化社会部所属。趣味は釣り。10数年前にデスク業務に就いた際、日帰り釣行が厳しくなった渓流でのフライフィッシングから海のルアー釣りに転向。基本は岸からターゲットを狙う「陸(おか)っぱり」。

続きを表示

2017年3月28日のニュース