柔道メダリスト殴られる 翌日会見では「銅メダルの代償さ」

[ 2016年8月13日 08:58 ]

 日本代表の応援より睡眠時間の確保を優先する「逆オリンピックおじさん」と化した筆者は、日の丸選手のメダル獲得ライブ場面をほぼ見逃している。でも現地発のトンデモ情報は決して見逃さない。とりわけ10日に飛び込んできた「柔道メダリスト殴られる」のニュースにはググッと反応してしまった。

 被害に遭ったのはベルギーの柔道男子73キロ級代表、ディルク・バンティヘルト(32)。8日の準決勝で日本の大野将平(24)にともえ投げを喫し敗れたものの、3位決定戦ではハンガリーのミロクシュ・ウングバリ(35)に腕ひしぎ十字固めで一本勝ちし、銅メダルを獲得した猛者だ。

 ベルギー紙「ル・ソワール」によると、彼は日付が変わった9日未明までリオ市内のコパカバーナ海岸に繰り出し、練習パートナーのマティアス・カス氏とともに「お祝い」をしていた。ところがそこに現れた女性がカス氏のスマホを強奪。追いかけたバンティヘルトは「別の女性」と格闘、左目を負傷し病院で治療を受けたという。

 ここまで読んで「ん?」と引っかかった。被害に遭ったバンティヘルトもカス氏も柔道選手。73キロ級だから決して大柄ではないが、想像してほしい。世界トップクラスの柔道家が練習仲間と連れだって夜の街を歩いている様を。「お祝い」なのだから2人ともシラフではなく、むしろ時間的にはヘベレケだった可能性があるものの、格闘選手特有の強烈なオーラが漂っていたはずだ。どれほど屈強な強盗だって、それなりの心得がなければ、彼らと事を起こそうなど思わないだろう。

 それでも彼らは襲われた。しかも女性に。

 僚友のスマホを奪った盗人を追跡した銅メダリストは左目の下に黒いアザが残るほどのダメージを受けた。たぶんグーパンチだ。しかも女性の。

 驚きはさらに続く。地元紙「オ・グロボ」は、銅メダリストに一撃を浴びせたとおぼしき人物について「ブラジル人のコールガールだった」と衝撃の事実を明かした。えっコールガール?

 以上の事件が表面化する数時間前、バンティヘルトは「一夜明け会見」に出席してベルギー・メディアの取材を受けている。当然、左目の異常に誰もが気がつく。ご本人は「これ?銅メダルの代償さ」とキザなセリフを吐いたらしいが、女性にパンチを浴びた恥ずかしさから本当のことを言えなかったのではと察するしかない。

 それにしても例のコールガール、もしかしてボクシング経験者なのか。柔道では打撃技が禁止されているので、それを承知の上で右ストレートを繰り出した可能性もある。万一組まれたら、必殺の腕ひしぎ十字固めを食らってしまう。きっと前夜はバンティヘルトの試合を見て研究したのだろう。

 ブラジルのボクシング関係者は彼女をスカウトすべきだ。銅メダリストをKOしたのだから、銀メダルくらいは狙えそう。4年後の東京大会では「ブラジルのしずちゃん」として話題になるかもしれない。

 その後、犯人は逮捕されたのか。日本選手のメダル乱獲よりも気になっている。(記者コラム・我満 晴朗) 

続きを表示

2016年8月13日のニュース