石田衣良氏“第2の又吉”へ金言「応募し続けて」

[ 2015年8月13日 11:23 ]

 “又吉先生”フィーバーが、まだまだ終わりそうにない。第153回芥川賞を「火花」で受賞したお笑いコンビ「ピース」の又吉直樹(35)。お笑いタレントとしても売れっ子だが、「芸人を100やる」と話した通り、本職に影響が出ないように空いた時間で文章を書いている。

 「自分も!」とモチベーションが上がった作家志望の社会人は少なくないだろう。

 そんなアマチュア作家に、プロが指南するセミナーがあるということで取材に行った。

 スマホ小説投稿サイト「E★エブリスタ」が主催する小説スクール。講師は「池袋ウエストゲートパーク」、直木賞受賞作となった「4TEEN」などで知られる人気作家の石田衣良氏(55)。

 「小説は自分で始めて、自分で終わらせることができるんです」

 作家になる夢は、自分ひとりで追うことができる、ということを説明していた。会社員ならば仕事、主婦なら家事、学生なら学業をやりながらできる。自分のペースで、自分がやりたいことをやって行くため、犠牲にしなければならないことは少ないはずだ。

 「小説は一番自由で、お金がかからない」とも語った。確かに、ペンと原稿用紙(今ではパソコンかスマホだろうか)があれば、作品を書ける。

 石田氏はコピーライターなどの職をへて、プロ作家になった。ドラマも大ヒットしたデビュー作「池袋ウエストゲートパーク」が人の目に触れたのは、「オール讀物」の97年11月号。37歳の時だった。本気で小説家を目指したのは36歳の時だというから、アマチュア歴は短いが、年齢的には遅い。作家の夢は何歳だろうが追いかけることができるということを体現している。

 アマチュア作家に対し、石田氏は「新人賞にはとにかく応募することが大事」と言った。「どんな作品でも必ず誰かが読んでくれる」からだ。作品の何が良くて、何が悪いのか、それは自分では分からない。だからこそ、たくさん書いて応募する。そうすることで腕が鍛えられていくという。

 文学賞で「すごい作品」と「うまい作品」の2作品が最後まで残った場合、どちらが選ばれるのか。ほとんどの場合、前者だという。「可能性があって、パワーを感じるほうが獲ることが多い」。たとえ荒削りでも、面白さは伝わる。だからこそ、応募することが大事なのかもしれない。

 又吉フィーバーで「作家になりたい」と思う若い世代が増えることも期待されている。「かもめのジョナサン」で知られる米作家のリチャード・バックは「プロの作家とは、書くことをやめなかったアマチュアのことである」と言った。

 成功者になれるのはほんの一握り。だが、夢をあきらめないアマチュアが、きょうも書き続けている。

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2015年8月13日のニュース