「助六」代役は? 勘三郎さんもいない…歌舞伎界“最大の危機”

[ 2013年2月5日 06:00 ]

工事用のカバーが取られ、全貌が明らかになった新歌舞伎座

市川団十郎さん死去

 中村勘三郎さんに続き、市川団十郎さんまでも旅立ってしまった歌舞伎界。ファンの衝撃は計り知れない。新しい歌舞伎座の4月開場を目前に、これからの歌舞伎はどうなるのか。関係者からは不安の声とともに海老蔵への強い期待の声が上がった。

 昨年末に発表された歌舞伎座こけら落とし公演の演目。団十郎さんは、4月公演第1部の最初の演目「寿祝歌舞伎華彩 鶴寿千歳」に、日本俳優協会会長で人間国宝の坂田藤十郎(81)とともに配役された。また6月公演では、歌舞伎十八番の「助六由縁江戸桜」で、主役の花川戸助六を披露することになっていた。同作の最初に行われる口上を松本幸四郎(70)が担当する豪華版で、ファンの注目を集めていた。

 4月公演のチケットは、往復はがきによる申し込み(抽選)をすでに受け付けており、松竹歌舞伎会会員向けの先行予約も今月7日から始まる。団十郎さんの悲報から一夜明けたこの日、松竹には「配役はどうなるのか」などの問い合わせが相次いだ。同社は緊急会議で対応を協議。演目変更や代役などについては「まだ何も決まっていない」と話した。同社関係者は「“当代最高のキャスト”を並べただけに、代役を決めるのも大変」と声を落とす。

 「…鶴寿千歳」は舞踊で、歌舞伎関係者によると「最悪の場合、団十郎さんが演じる予定だった雄鶴抜きの演出も可能」という。ただ「助六」だけは話が別だ。

 「成田屋」の屋号を持つ市川家に伝わるお家芸で、歌舞伎十八番の一つ。歌舞伎作品の中でも特に人気がある演目だ。それをこけら落とし公演に連ねたからには「団十郎さんでないと格好がつかない。海老蔵の代役も考えられるが、共演する大御所の(尾上)菊五郎、(中村)吉右衛門とは釣り合わない」と指摘。何らかの変更の可能性があるという。

 市川団十郎という大名跡は歌舞伎界の象徴。「荒事」と言われ重厚な衣装で知られる演目「暫(しばらく)」や、口をへの字にして寄り目にする「にらみ」など、世間がイメージする歌舞伎の所作を代々受け継いでいる。一年間続くこけら落とし公演の関係者は「歌舞伎の代名詞でもある団十郎さんの穴はあまりに大きい。勘三郎さんもいないのに…」と集客などを心配した。

 400年の歴史で“最大の危機”を迎えた歌舞伎界。演劇評論家の藤田洋さんは「名優を同時期に失う危機を歌舞伎は何度も乗り越えている。ファイトを持った若い世代から新しいスターが出てくるはず」と希望を口にした。歌舞伎の未来は海老蔵の精進にかかっているともいえそうだ。

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2013年2月5日のニュース