栗山英樹氏が特別寄稿「大谷は日本野球の夢をかなえてくれた」 忘れられない12月9日

[ 2023年12月12日 05:00 ]

大勢の来場者をバックに2023ミス日本グランプリの吉岡恵麻さん(左)と2023ミス日本「水の天使」の竹田聖彩さん(右)とともに笑顔を見せるグランプリの栗山英樹氏(中央左)と特別賞の小田(撮影・木村 揚輔)
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 スポーツニッポンフォーラム制定「FOR ALL 2023」の表彰式が11日、東京都文京区の東京ドームホテルで開催された。グランプリには3月のWBCで侍ジャパン監督として14年ぶりの世界一に導いた栗山英樹氏(62)、特別賞にはプロ車いすテニス選手で、6月の全仏オープン男子シングルス優勝の小田凱人(ときと、17=東海理化)が選出された。栗山氏は受賞を記念し特別寄稿。ドジャース入団が決まった、日本ハム監督時代の教え子で侍ジャパンの一員でもあった大谷翔平投手(29)にエールを送った。グランプリ受賞者には副賞として100万円が贈られた。

 翔平がドジャースに決めたと聞いて、ドラマはつながっているんだと感じた。日本人と歴史的に深いつながりがあるチーム。日本野球に大きな影響を与えたドジャース戦法に始まり、かつて現役時代の長嶋(茂雄)さんがメジャー入りを誘われ、星野(仙一)さんとも関わりが深かった。キャスターのときは私も野茂(英雄)の取材で何度もドジャースタジアムに足を運んだ。

 日本人との歴史がまた深くつながる。翔平がやることで、ドラマがつくられていくんだなあ、と思った。

 12月9日。この日に発表したのは、少し意識していた可能性はあるかもしれない。私にとっては一生忘れられない日だ。ちょうど11年前のこと。メジャー挑戦を公表していた翔平が「ファイターズに行きます」と言ってくれた。その言葉で私も覚悟ができた。これだけの宝を絶対に壊しちゃいけない。そう思って、最も怖かった日でもあった。あの日から歩んだ二刀流の道。あれから11年がたち、12月9日にドジャースに決めた。それもメジャー史上最高の評価を得て。金額の高さではなく、それだけ価値ある選手になった。それが何よりうれしい。

 かつて日本野球の先人たちの夢がメジャーに追いつき、追い越すこと。ある意味、その夢をかなえてくれた。この難しい時代に、みんなに笑顔を届ける人が絶対に必要だ。そう思うと、やっぱり野球の神様から遣わされた存在なんだと思う。

 そんな翔平の何が凄いのか。史上最高額の契約を実現できたのは、二刀流だったからこそ。二度の右肘手術で本来なら3シーズン近く棒に振っているところが、打者で出場し続けることでトップレベルを維持し続けた。選手は休むと後退するのが、それがない。「どんなときでも野球をやっていたい」。その純粋な思いが凄い。

 でも、ここからが勝負だ。ドジャースはより高みを目指して勝ちに向かうチーム。勝つためにある二刀流の良さが、より発揮しやすく、野球に集中できるだろう。ただし、翔平の天井はもっと上にあると信じている。誰も想像できないものを見せてくれる可能性は十分にある。水島新司先生の漫画の域を超えるような野球。今まで漫画の世界を普通にやりきってきたけど、漫画でも描けないことをやってくれる。それを楽しみにしている。(侍ジャパン前監督)

 ≪野球人に大事なのは体≫栗山氏は健康計測機器メーカーの「第20回タニタ健康大賞」を受賞。午前、都内で行われた授賞式に出席し「野球人に何が大事なのかというと体」と喜びを表現した。大谷のドジャース入りに関しては「翔平らしさが出る環境。もっと日本中、世界中をびっくりさせてくれと思っている」と話した。

 ◇栗山 英樹(くりやま・ひでき)1961年(昭36)4月26日生まれ、東京都出身の62歳。創価から東京学芸大を経て、83年ドラフト外でヤクルト入団。89年に外野手でゴールデングラブ賞獲得。90年に現役引退した。通算成績は494試合で打率.279、7本塁打、67打点、23盗塁。スポーツキャスター、白鴎大教授などを歴任し、12~21年に日本ハム監督。12年にリーグ優勝、16年に日本一に輝いた。監督通算1410試合で684勝672敗54分け、勝率.504。21年11月に侍ジャパン監督に就任。3月のWBCで世界一に導いた。

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