【虎番リポート】天国の祖母の誕生日に届けた…シリーズ第4戦「湯浅の1球」に秘められた思い

[ 2023年11月11日 05:15 ]

日本シリーズ第4戦の8回途中から登板した湯浅
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 「湯浅の1球」が記憶に新しい虎党の方も多いのではないだろうか。1日の日本シリーズ第4戦。同点の8回2死一、三塁で139日ぶりの1軍登板を果たした右腕は、中川圭をこん身の直球で二飛に仕留め、試合の流れを変えた。シリーズ全体の分岐点にも挙げられる場面。その時、マウンド上で秘めていた思いを今、熱き右腕が明かしてくれた。

 「ばあちゃんが亡くなったんですよ。第4戦がちょうど誕生日だった…。びっくりな気持ちが一番でかいし、帰れてないので、まだ実感がわいていない」

 シリーズ開幕4日前の10月24日だった。祖母・忍さんが心筋梗塞のため、76歳で帰らぬ人になった。両親とともに一つ屋根の下で暮らし、いつも孫を応援してくれていた最愛の存在の、突然の訃報。当時、絶対に日本シリーズで出番が巡ってくると信じ、みやざきフェニックス・リーグで調整を続けていた湯浅は「今帰るのは、おばあちゃんも望んでいない」と、葬儀・告別式には参列しなかった。代わりに天国にシリーズでの自らの勇姿を届けるべく汗を流した。

 満を持して第3戦からチームに合流。第4戦が行われた今月1日が、忍さんが存命なら77歳を迎える誕生日だった。当日、湯浅は母・衣子さんから「きょう投げる気がする」とメッセージをもらっていたという。その直感は的中した。シリーズ初のベンチ入りを果たし、そして…。チームの窮地を救う快投は、「おばあちゃん」から力をもらってなし得たものと確信している。

 「ファンの大声援に加えて、不思議な力が働いたんじゃないですかね。見守ってくれていたんだと思う」

 オフの帰省の際、考えていることがある。「日本シリーズで使った道具を仏壇に供えたいなと」。見守ってくれていたであろう天国の祖母へ、感謝の思いとともに日本一の報告をするつもりだ。(阪井 日向)

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