【内田雅也の追球】“あの”15年前とは違う 岡田監督は悪夢を経験し、どっしり構える心の余裕がある

[ 2023年8月31日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2―4DeNA ( 2023年8月30日    甲子園 )

<神・D>6回、近本の打球でリクエストを要求した岡田監督 (撮影・須田 麻祐子)
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 敗戦後、通路を歩きながら、阪神監督・岡田彰布は「ちょうどええ負けちゃうか」と笑った。

 8月最後の一戦だった。春先から繰り返してきたように「勝負は9月」である。その9月を迎えようとしている。これからが勝負である。大リーグで「セプテンバー・ヒート」と呼ばれる胸突き八丁に正念場に向け、気持ちを引き締めた。

 前夜(29日)、マジックナンバーが消え、この夜の敗戦で2位・広島とのゲーム差は5と縮まった。あの悪夢も頭をよぎるかもしれない。最大13ゲーム差を逆転され、巨人に優勝をさらわれた2008年の歴史的V逸である。

 あの年の9月3日、横浜で現DeNA監督の三浦大輔に完封を喫した。2位・巨人に5ゲーム差と迫られた。残り29試合だった。

 今と同じ残り26試合時点は9月7日、広島市民球場で敗れ、巨人とのゲーム差は4だった。当時も監督だった岡田彰布は「やられるかもしれん」と嫌な予感を抱いたと後に明かしている。

 どこか、今と似ているような気がしないでもない。だが、あれから15年。当時とは決定的に異なる点がある。

 それは監督があの悪夢を経験していることである。再び監督となった岡田はもう同じ轍(てつ)は踏まないだろう。

 今はどっしりと構える心の余裕がある。この夜も9回裏、最後の攻撃時、モニター画面に映った岡田はベンチの背もたれに両肘を掛けていた。ふんぞり返るような姿勢でいた。

 選手は常に監督の姿を見ている。文字通り、どっしりと腰をすえた監督の姿は安心感を与えることだろう。

 それから、当時とはチーム全体の疲労感が違っている。08年は北京五輪に出た新井貴浩(現広島監督)が腰の疲労骨折で「勝負の9月」は不在だった。JFKをはじめ救援投手陣は登板過多で疲労が蓄積していた。今年は先発、救援ともにこれまで全く無理な起用はしていない。9月になれば得意の継投策でフル稼働できるだろう。

 もう、9月がやってくる。この時期になれば、敗れたことを引きずっている時ではない。気持ちを切りかえて前を向きたい。力まず、焦らず、普通に戦えばいい。そして最近、岡田がよく口にする「みんなで」勝利に向かいたい。=敬称略=(編集委員)

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