花巻東 4年ぶり夏制覇 涙の佐々木麟太郎「胸にこみ上げてきました」

[ 2023年7月27日 05:27 ]

第105回全国高校野球選手権岩手大会決勝   花巻東10―0盛岡三 ( 2023年7月26日    きたぎんボールパーク )

<花巻東・盛岡三>優勝し仲間と抱き合う花巻東・佐々木麟(右)(撮影・光山 貴大)
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 怪物の夏は、まだまだ続く。歴代最多の高校通算140本塁打を誇る花巻東・佐々木麟太郎内野手(3年)が26日、岩手大会決勝の盛岡三戦に「3番・一塁」で出場。1安打1打点で4年ぶり11度目の優勝に貢献し、22年春以来、自身2度目の甲子園切符をつかんだ。父でもある佐々木洋監督(48)と挑む最後の夏。今秋ドラフトでも1位候補に挙がる長距離砲が、怪物伝説を締めくくるべく聖地に乗り込む。

 優勝まであと1人。サングラスの奥の目は必死に涙をこらえていた。最後の打者が三振に倒れると、佐々木麟は両手を広げて一目散にマウンドへ。「勝ってマウンドに集まって、校歌を歌う」。3年間、何度もイメージしてきた歓喜の瞬間が初めて現実となった。自然とあふれる涙。「苦しい中、くじけずに勝ち上がってきたので、胸にこみ上げてきました」と感慨を込めた。

 高校通算140本塁打の怪物も今大会は苦しんだ。大会前に背中を痛めた影響で状態が上がらず、期待された本塁打は0。フルスイングを貫くことは厳しかったが「チームが勝つ打撃をする」と覚悟を決め、コンパクトな打撃でチームに貢献。この日も4回1死二塁から外角スライダーを逆方向に軽打してリードを7点に広げる左前適時打とし「チームを勝たせるためにと思って打席に入っていたので、得点が入ってうれしかった」と誇った。

 「小さい時からずっと憧れの存在」と以前から名を挙げていたのが、花巻東の大先輩でもあるブルージェイズ・菊池とエンゼルス・大谷だ。高校最後の夏は菊池が甲子園ベスト4で、大谷は岩手大会決勝で敗退。偉大な先輩も掲げてきた“岩手から日本一”を目指す。前回で初の甲子園出場だった2年選抜は初戦敗退で自身も4打数無安打、2三振。「チームとしても、岩手県としても新たな歴史をつくりたい。岩手代表のプライドを持って戦い抜く」と力を込める。

 きょう27日は父でもある佐々木洋監督の48歳の誕生日。試合前の円陣では「できれば1日前の誕生日プレゼントが欲しい」とおねだりされた。「監督さんとしても苦しい思いをしていたと思う。とにかく優勝できたのが自分としてもうれしいなと思います」と笑う。

 父子で臨む最後の夏。期待されるのは甲子園初アーチだ。佐々木麟も「(本塁打は)自分の武器でもあるし、とにかく毎打席、楽しみたい」とフルスイングを誓う。清原和博、松井秀喜、松坂大輔…。かつて怪物と呼ばれた選手は高校最後の夏に必ずドラマや名勝負を生んできた。佐々木麟太郎は真夏の聖地で、どんな伝説を刻むだろうか。(村井 樹)

 ≪記者フリートーク アマチュア野球担当・村井 樹≫
 5月中旬の花巻東の沖縄遠征。同行して取材していた記者は、突然、佐々木洋監督に呼び出された。「何かやらかしたか…」。急いで球場の監督室に行くと、息子でもある麟太郎が試合後に球場の外で待っている子供に優しく応じていることを紹介した記事の感想を言われた。「こんなふうに書いてくれて、ありがとう」。一瞬で心をつかまれた。

 談笑を終えて退室する際は弁当店の弁当を手渡された。「昼ご飯に俺の手作り弁当、食べなよ」。寡黙で真面目なイメージが強かった分、冗談に驚いたが、距離が縮まったように感じてうれしかった。「ここで野球がしたい」と佐々木監督を慕って岩手中から集まって来る選手の気持ちが分かった時間だった。

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