繊細さに図太さも身につけた佐々木朗希…、WBC球を完璧に操る姿に進化確信

[ 2023年3月13日 08:00 ]

WBC1次R<オーストラリア・日本>並んでキャッチボールをする大谷(手前)と佐々木朗(撮影・篠原岳夫)
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 侍ジャパンで投手コーチを務めるロッテ・吉井監督に、WBCで使用される球について質問すると、「だから…、みんな、気にしすぎなんだって…」といつも言われる。

 何度も聞いて本当に恐縮する。それでも、NPBで使用される公式球とは多少異なるし、滑りやすいといわれる球になじめず、対応が遅れる投手も、これまではいた。

 そんな中、佐々木朗希の対応力には驚いた。昨年11月にオーストラリアと対戦した侍ジャパンの強化試合では4回無失点ながらも、直球と同じような軌道から落ちるフォークが抜け、なかなか空振りを奪えなかった。

 ところが、今季初実戦登板となった2月15日のヤクルトとの練習試合では、WBC球で2回で5三振を奪う1安打無失点と完璧だった。
 登板後は「自分の中では(WBC球も)普通に投げられたり、握れていると思う。変化球を含めてバランス良く投げられた」と振り返ったが、わずかな期間で、感覚をここまで高めたのだから、素直に凄いと思う。

 東日本大震災から12年となった11日のWBC1次ラウンドのチェコ戦に先発した佐々木朗が4回途中までで8三振を奪う快投も納得だ。それにしても、誰もが「怪物」と認めながらも、どこかひ弱さも感じた以前の姿はすっかりと消えた。

 高校日本代表では、右手にまめをつくり、満足に投げられなかった。プロ1年目はロッテが大事に育成しながらも、右肘に何度も違和感を訴え、シーズン最終戦でデビューする予定も飛ばした。
 プロ入り後の取材でも、目立つのが苦手なんだなと感じてきたし、良くも悪くも繊細で、怪物に必要なのは、「鈍感力」なのかなとも思ったりした。そんな課程を見てきたからこそ、異なる球も気にせず、投げられるタフさが頼もしく映る。

 今回の侍ジャパンを経験し、佐々木朗は元来の繊細さに、国際大会を経験し、図太さも身につけるんじゃないかと感じている。それにしても、キャンプ中はWBC球をうまく使いこなせていないように見えた投手たちも、本番になれば、全員がしっかりと対応できるように調整してきた。

 たいしたものである。その陰ではきっと、吉井監督が得意の話術で、投手陣の不安を取り除いたのではないだろうか。自分は勝手にそう思っている。
(記者コラム・横市 勇)

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