イチロー氏 09年WBC連覇決めた「伝説の中前打」を語る 「あの大会で決めていたことは」

[ 2023年3月6日 19:05 ]

イチロー氏(AP)
Photo By AP

 コナミデジタルエンタテインメントは6日、モバイルゲーム「プロ野球スピリッツA」において、マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(49)への特別インタビュー動画をYouTubeで公開した。動画では2006年と2009年に行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でイチロー氏とともに戦った優勝メンバーの中からベストオーダーを選出。メンバーや大会への思いのほか、日の丸を背負う覚悟などをイチロー氏ならではの言葉で語っている。その中で2009年の第2回WBC決勝で延長10回に決勝・韓国戦の中前打を放った際のエピソードを語る場面があった。

 動画では、第5回WBC開催を記念し、野球日本代表の侍ジャパンが連覇を果たした2006年第1回大会、2009年第2回大会に出場した代表選手から、イチロー氏が独自の視点で「ベストナイン」を決める内容で、投手3人、野手はDH含む9人が選ばれた。

 その中で「岩村(明憲)は入らないから。あいつさ、あんなところでさ、盗塁しないでしょマジで」とイチロー氏が笑いながら語ったのは、09年WBC決勝でのハイライトとなるシーン。9回裏に同点に追いつかれ、迎えた10回2死一、三塁でイチロー氏が打席に入った場面だった。

 10回は6番の内川が右前打で出塁。続く稲葉が送りバントを決め1死二塁。8番の岩村が左前打で一、三塁とした。しかし、代打・川崎が初球を打ち上げて遊飛。2死一、三塁から岩村が二塁盗塁に成功した。「あの打席は僕はもちろん怖いし、それまでの流れで“まじかっ”て。少なくとも(前の打者の)川崎宗則がね、何球か見せてくれると思ったら、初球をショートフライで、僕準備する時間がなくて…。そういうことも含めて流れ悪いよなって思わされる打席」と振り返った。韓国との決勝まで通算38打数8安打で、打率.211と不振を極めたが、決勝戦では9回までに5打数3安打。しかも、韓国の守護神だった林昌勇(イム・チャンヨン)からは、9回に二塁打を放っていた。それでも「そこまでの流れが悪かった」という。

 イチロー氏は打席で土をならしながら「敬遠だったら、楽だな」とも思ったという。その上で「あそこで僕が願ったのは1球目だけボール来てくれ。そしたら僕が相当有利になる。頼む」と祈ってボールとなった。「それで一気に僕の流れができて、いつでもバットを振れる状態。1球目は振りたくなかった。1球見たあとはもう」と準備は整ったという。「その前の打席も投手は林だったので。軌道、特に真っすぐの軌道は頭にもうインプットされているし、そうやって始まっていったんですよ。その時は“僕がこれを決める”って強い思い、スイッチが入ってるから、いらんことしてほしくないわけですよ。それで岩村がパーって(走った)」と語った。2球目に二塁盗塁に成功したが、二、三塁となったことで、相手からすれば一塁に歩かせる選択肢も生まれた。

 だが韓国バッテリーは勝負を選択した。イチロー氏はファウルなどで粘り、8球目を中前にはじき返し2者生還。5-3と勝ち越した。中前へ抜ける打球に一塁ベースへ向かうイチロー氏は「走りながら、一塁向かう時に“僕はどう振る舞うべきか”」と考えていたという。「そこで興奮したら駄目」と話した。「だから僕はあの時に決めていたことは、まず全日本のダグアウトは見ちゃ駄目だ。三塁側のベンチは見ない。いつも通りに振る舞うことが、おそらく相手も悔しいだろうな、って、走りながら考えるわけですよ」と語った。肘当てを外し、ベース上ではポーカーフェイスを貫いたイチロー氏。「ただ、飛び上がるほどうれしかったし、もちろん。それを見せるか、見せないかという話」と心情を吐露した。

 僕、WBCに2回出場しましたけど、あの時に“イチローって、あんな感情的になるんだ”って当時思った方もたくさんいらっしゃると思うんですけど、あの大会で僕が決めていたことは、自分のプレーでは感情は見せない。でも他人のプレーでは全力で喜ぶし、応援する。それを決めていた。普段はね、チームメートの活躍でもそんな大きく感情を見せることはないけど、でもこの大会はやっぱりそうしたくなったし、それで盛り上がってくれるというのもきっと。2006年は初めての大会であったし、やっぱり盛り上げなきゃこの大会は、育っていかないと、というのがあったので」と語った。

 「プロスピA」では、8日午後2時59分までは「2006 日本代表セレクション」、同日午後3時から22日午後2時59分までは「2009 日本代表セレクション」を開催する。

続きを表示

2023年3月6日のニュース