平成唯一の3冠王・松中氏 ヤクルト・村上の令和初偉業に太鼓判 ポイントは技術、打線、優勝争い

[ 2022年8月30日 05:30 ]

令和初の三冠王を狙うヤクルトの村上
Photo By スポニチ

 ヤクルトの村上宗隆内野手(22)が史上8人目の3冠王に向け、独走状態に入ってきた。ダイエー(現ソフトバンク)時代の2004年に成し遂げた「平成唯一の3冠王」である松中信彦氏(48)がスポニチ本紙の取材に応じ、村上の打撃を分析。自身以来18年ぶりで令和初となる偉業達成に太鼓判を押し、「技術」「打線」「優勝争い」の3つの要素が、3冠王のポイントになると語った。(取材・構成 福浦 健太郎)

 昨日(28日)もまた、打ちましたね。打率も・340に乗った。村上君は四球も多く、ここからはなかなか落ちることはない。(3冠王は)現実味を帯びてきたと思います。

 春先は逆方向に本塁打は出ていたけど、右翼に飛ばなかった。ヒットOKで内角に投げていれば長打にはならなかったけど、最近の5打席連発もそうだけど、右翼に本塁打が出始めた。内角も本塁打するようになって、投手が投げる場所がなくなった。

 打撃フォームは最初からトップの位置をキープし、無駄な動きがない。例えるならば弓を最大限、引いた状態であとは発射するだけ。差し込まれたり、振り遅れることなく、どんなボールも反応できる。あれだけ腕を引けば右肩が入って内角は窮屈になるけど、それもさばける。

 フライボール革命が流行し、バットを下から出そうという選手が多くなった中、村上君の打ち方で、みんながその考えを見直すのではないかと思っている。上からしっかり叩いて、押し込む。自分もボールをつぶしてスピンをかけて本塁打にしていた。理にかなった打ち方だから打率も残る。下から振れば一発は増えるかもしれないけど、打率は落ちますからね。

 山田やオスナ、サンタナと前後がしっかりした打線も大きい。自分の時も前に井口、後ろに城島がいたから勝負してくれた。いなければ四球でもいいと厳しい球を投げられる。四球が増え、打ちたい気持ちが空回りしてしまうこともあります。

 個人記録も気になる終盤だが、自分の時は小久保さんの件(注)で、何としても優勝したい思いでした。だから個人成績は最後の最後で(打撃3部門)1位なのか、セギノール(日本ハム)と並んでいるのかと気づく感じ。優勝争いしていると、そこに集中できる。村上君は2冠はほぼ確定だし、優勝だけに向かってやれば結果も付いてきます。

 熊本の後輩だし、村上君が獲れば8人しかいない3冠王の2人が熊本になる。自分もたまたま、平成で唯一になったけど、令和の最初に獲ってほしい。楽しみに見ています。(元ソフトバンクホークス内野手)

 ▽注 03年11月3日にケガでシーズンを棒に振ったダイエー・小久保裕紀の巨人への無償トレード発表。当時の球団フロントの暴走が原因だったが、選手側は猛反発し、先頭に立ったのは選手会長の松中だった。奮起した04年のダイエーは2位・西武に4・5差をつけて勝率1位。

 ▽フライボール革命 大リーグを中心に浸透する「ゴロよりもフライボールの方が安打の確率が上がる」との打撃理論。打球速度158キロ以上で26~30度の角度で打ち出せば、打率5割以上が期待できるという。この打球速度と角度の組み合わせは長打が出やすい「バレルゾーン」とも呼ばれる。打球速度が上がるほど打球角度は広がる。同ゾーン内の打球が打者の理想とされ、以前よりアッパー気味のスイングが増え本塁打と同時に三振が激増した。

 ▽松中の04年3冠王 6月30日時点で松中は打率.363でトップも、ダイエー(現ソフトバンク)の同僚、城島が松中に5本差の29本塁打、同13打点差の75打点と2部門でトップだった。松中は7月に6試合連続本塁打など一時、3部門トップに。以後、打率は日本ハム・小笠原、打点は城島、打率は日本ハム・セギノールと熾烈(しれつ)な争い。松中は9月11日に42号を含む3安打で7月24日以来の3部門トップに立ち、最終的に打率.358、44本塁打(セギノールとタイ)、120打点で3冠王を獲得。

 ◇松中 信彦(まつなか・のぶひこ)1973年(昭48)12月26日生まれ、熊本県出身の48歳。八代一(現秀岳館)から新日鉄君津を経て、96年ドラフト2位(逆指名)でダイエー(現ソフトバンク)入団。04年に史上7人目の3冠王。00、04年のパ・リーグMVPなど、首位打者、本塁打王2回、打点王3回。15年に現役引退。通算成績は1780試合出場で打率.296、352本塁打、1168打点、28盗塁。20年に四国・香川のGM兼総監督、21年はロッテ臨時打撃コーチを務めた。96年アトランタ五輪、06年WBC日本代表。左投げ左打ち。

続きを表示

この記事のフォト

2022年8月30日のニュース