Rソックス沢村、自身初体験のPOで勝っても負けても取材対応拒まず 右腕の姿勢に強烈なプロ意識を見た

[ 2021年10月24日 08:00 ]

第5戦後に取材に応じる沢村(撮影・杉浦大介通信員)
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 レッドソックスは22日、ヒューストンで行われたア・リーグ優勝決定シリーズ第6戦でアストロズに敗れ、沢村拓一投手のメジャー1年目が終わった。今季の日本選手で唯一出場した、自身初体験のプレーオフ。沢村は3試合、合計2イニングを投げて2安打1失点(自責点1)、3四死球、2奪三振。初戦こそ制球を乱して1失点だったものの、2、3度目の登板では無失点に抑えて一定の成果を示した。

 そんな投球内容と同時に、いや、個人的にはそれ以上に印象に残ったのは、今シリーズ中の沢村は非常に寛容に日本メディアに囲み取材の時間をつくってくれたことだ。

 15日、今ポストシーズンで初めて出場メンバー入りが決まると、第1戦前に「ここまできたらやるだけなので、しっかり自分の責任を果たしたい」と決意表明。その日、敵地での初登板で緊張からか制球を乱し、1/3イニングで1失点と投球はさえなかったが、それでも取材対応を避けなかった。

 「この球場の独特の地鳴りのような声援だったり、雰囲気というのに完全にのまれてしまいました。死ぬほど緊張しました。その中でやらなければいけない。一回経験できたことは、自分の中でもの凄く大きいものになるんじゃないかなと思います」

 第2戦の前、初登板を振り返った際の潔いコメントが新鮮だった。以降も第3戦、第5戦の登板後、さらに第6戦で敗れてシーズン終了後も、沢村は私たちメディアの前に登場し続けた。結局、全6戦中5戦で試合前後のどちらかに取材対応したことになる。しかも適当なやりとりに終始するのではなく、ほぼ毎回、10分前後の長時間にわたってじっくりと質問に応えてくれるのが恒例だった。

 注目度の高いプレーオフでは取材に訪れる記者の数も増える。重要な舞台であるがゆえ、長時間のメディア対応は避け、プレーに集中したいと考える選手が多かったとしても理解はできる。全体の記者会見に招かれる一部のスター選手、活躍した選手を除き、記者たちの前に顔を出さなければならない義務はない。ただ、そんな中でも沢村は、勝っても負けても、「皆さん、わざわざ来てくださったんですから」と取材対応を拒むことはなかった。そういった右腕の姿勢に、強烈なプロ意識を見たのは私だけではなかったはずだ。

 「困ったら勇気を持って前に進んだり、試したりがもの凄く大事。失敗をした時には、反省ももちろんするんですけど、次はこうしようかな、という工夫だったり、変わっていく勇気はもの凄く大事なんじゃないかなと思います」

 初登板で苦しんだ後、投球フォームをノーワインドアップに変えて適応した際の、そんな言葉も印象深い。2021年のプレーオフ取材を振り返った時、どのゲームよりも、沢村が残したこれらの味のある言葉を真っ先に思い返すことになるかもしれない。(杉浦大介通信員)

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