ソフトバンクはなぜ強い 柳町とリチャードに見る“常勝軍団の礎”となる育成方法

[ 2021年3月20日 09:00 ]

砂川リチャード(左)と柳町達
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 ソフトバンクはなぜ強いのか。プロ野球ファンなら誰もが気になるテーマだ。1つの答えとして「選手層の厚さ」が挙げられる。将来の主力候補として期待される柳町達外野手(23)と砂川リチャード内野手(21)に焦点を当てて考えてみた。

 今季ブレークを目指す2年目の柳町。2月、宮崎キャンプでのシート打撃では4打数4安打をマークするなど初の開幕1軍へ猛アピールし、A組でキャンプを完走した。好調を維持し、2日から開幕したオープン戦に臨んだが、5試合で8打数2安打。打率・250と、1軍レベルでもう一つ結果を残せなかった。

 昨春キャンプは育成選手だったリチャードも今年は支配下選手として、初のA組でキャンプを完走した。小久保ヘッドコーチが連日、熱血打撃指導する姿からも期待の大きさが伝わってきた。シート打撃では特大アーチを放つなど、自慢の長打力をアピールしたが、オープン戦に入ると急ブレーキ。7試合に出場し8打数1安打。打率・125と快音が消え、1軍のレベルの高さを痛感した。

 2人は12日に2軍落ちを宣告された。ここでオープン戦の経験が生きる。13日、筑後のファーム施設で行われた教育リーグ中日戦で悔しさをぶつけた。「1番・左翼」で先発した柳町は2安打2四球、1敵失で5打席全て出塁し、チャンスメーク。4番に座ったリチャードは2安打4打点と大暴れだ。「上林さんと栗原さんを抜かないと1軍には残れない」と柳町がライバルの名前を挙げて話せば「1軍では打てる球が来ない時もある。ホームランにできなかったのが悔しい。4打席立てるのは楽しいが、ここ(2軍)で満足していたらダメ」とリチャード。2人の口からは、1軍を意識したコメントばかりが出てきた。

 それもそのはずだ。外野手のレギュラー候補には左翼にグラシアル。中堅には柳田が君臨する。固まっていないのが右翼だが、上林、栗原、真砂の3人が奪い合っている。それだけではない。打撃職人の長谷川にデスパイネ、19年ドラフト1位・佐藤直も控える。また、リチャードが狙う三塁定位置には、不動の松田が居座る。さらに、ユーティリティープレーヤーの牧原大、昨季日本シリーズMVPに輝いた栗原も挑戦中だ。

 レギュラー陣が故障しても、シーズンを戦い抜ける戦力が整っている。昨年は遊撃手の今宮が左ふくらはぎを負傷し、43試合で離脱。しかし、当時22歳の川瀬が名手の穴を埋めて、4年連続日本一を達成。この実績が、選手層の厚さを証明している。

 ソフトバンクでは、し烈な競争を勝ち抜かなければ試合に出られない。しかし、首脳陣は1軍で若手選手に多くのチャンスを与えていた。結果を残せなくても、1軍での経験は大きな財産となり、チーム全体の底上げにもつながる。この育成方法が選手層に厚みを生み出し、常勝軍団の礎となっていると考える。柳町とリチャードが1回りも、2回りも成長し、1軍の舞台で活躍する日が楽しみだ。(記者コラム・福井 亮太)

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2021年3月20日のニュース